渡邉大輔(1982年生)さんの本『明るい映画、暗い映画 21世紀のスクリーン革命』【2021.10.10. blueprint 刊】について続ける。
「明るい ⇔ 暗い」をキイワードとする映画史の再検証・再構築の試みには納得しかねるが、デジタルデバイスの進化に伴う映像表現の変容などの考察・指摘からは、幾つも教えられることがあった。
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逆光や半逆光で撮ると太陽や照明が直接レンズに入ってハレーションを起こし、「フレア」や「ゴースト」と呼ぶ乱反射・干渉現象が起きる。
かつては、そのため画面がぼやけるのを避け、光源が直接レンズに当たらないように「ハレ切り」をするのが当たり前だった。
「ズボラ」とか「ジザイ(自在)」と呼ぶ専用の遮光板を使ったり、レンズ前で手のひらや帽子をかざして余計な光を遮断した。ときには手元の台本を使ったりも。最近のレンズは逆光耐性が進化し、さらにデジタルカメになってからは起こりにくくなっているようだ。
CCDカメラに特有の「スミア(smear)」もある。
昔は邪魔・余計なものとして排除されてきたが、最近は構わず多用されたり、積極的に取り入れる傾向にあるようだ。「インパクト強く刺激的で印象に残り効果的」だという。人気のアニメなどでは、「フレア」や「スミア」をわざわざ描いて盛り上げる手法も多用される。より激しく刺激的に!「盛る」のが当たり前、ということか。メガ盛り、ギガ盛り‥‥
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デジタルになってHDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)画像も増えた。高い輝度幅 を持つため、暗部は黒つぶれせず、明るいところの白とびもしない。
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昔「駒撮り」とか「微速度撮影(低速度撮影)」といわれたものも、今は「タイムラプス」簡単になった。
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撮影用ドローンの普及に加え、手持ちカメラの手振れもどんどん少なくなってきた。その昔ステディカムなどの高価な防振装置(スタビライザー)を要したものが、ウェアラブルカメラGoPro:HERO7や3軸手持ちジンバルなどで安価に手振れを防止する。
デジタル技術の高度化・繊細化に、ロートルは驚くばかりで置いてけ堀だ。