大阪の天満天神繁昌亭に行ってきた。
昼席のトリは、桂塩鯛さん。まくらは、小咄の三層構造の話だった。こんな話だ。
一層目は、誰が聞いても分かる分かり易いもの。
「鳩がなんか落としていきよった」
「ふ~ん」
二層目は、ちょっと考えるやつ。
「お隣の奥さん交通事故に会いはって顔を怪我されたそうで」
「まぁお気の毒に」
「けど、整形手術で元の顔に戻りはったみたい」
「まぁお気の毒に」
三層目は、これにとどまらず、オチを聞いてもオチてるのかオチてないのか微妙、なんか胸のあたりにざわざわが残るようなたぐい。故枝雀師匠の得意芸だったとしてこんなのを紹介していた。
「おっちゃん、そこどいてんか?」
「あっ、この犬もの言うてる。そんな訳ないわな。犬が人間の言葉喋るわけないわな」
「おっちゃん、そこにおると日陰になって寒いちゅうねん」
「あっ、やっぱりこの犬もの言うてるで!」
「お父さん、さっきから何ワンワン言うてんの?」
演目は『蛇含草』だった。(中身はググって)
話芸ではなく顔芸で見せる落語。理屈やオチで笑わせるのではない。しぐさ、身振り、観客との駆け引き・間合いの真剣勝負。餅好きが餅を喰う様子の微細な描写がキモ。好演だった。(後で調べてみたら最近ちょくちょくやってるネタだったようだ。)
落語は話芸だといわれる。言葉の芸。けど、表情やしぐさまで堪能しようと思えば、ラジオやCD・DVDでは少々物足りない。小屋に足を運んでこそ味わえるものがある。
つまりは、生が一番 生でなければ見られないものが確かにあるようだ。「練り物・缶詰」の映画だって同じこと。映画館の暗闇でしか経験できないものがあるのだ。改めてそう思った。
ということで、
塩鯛さんの兄弟子筋の大先輩 桂枝雀さんの顔芸・しぐさ芸を少々。