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“空族”富田インタビュー

MAMMO.TVに、『国道20号線』(2006)や『サウダーヂ』(2011)を作った映像制作集団“空族”の冨田克也さん(1972年甲府市出身)のインタビューが載っている。
MAMMO.TVというのは、「いま、高校生のあなたに、そして、かつて高校生だったあなたに、いろんなジャンルの情報から「自分の頭で考えるヒント」を見つけ出すための
インターネット・サイト
」とあった。教育ソフトの開発などを手掛けてきた古藤事務所が2001年から運営してきた。【MAMMO.TV「INTERVIEW ♯295」から引用する】

僕はここ9年くらいトラック運転手をやりながら映画を撮っていました。好きなことを仕事にできるような幸運な人もいます。

しかし、そういう夢をもったところで全員が実現できるわけもない。だから、今の時代、
自分の好きなものは仕事とは別にもっておいたほうがいいかもしれないとも思います。

「夢をもちなさい」と若い頃、よく大人に言われたものですが、いま同じことを言おうものなら、「こんな世の中に夢なんかひとつもない」と言われるでしょうし、僕もそう思います。

ある職業を夢の実現と考えて、それに邁進した結果、精神を病んでしまう人がかなりいて、それなら仕事を生活の“一番”に置かずに生きる方法を探るほうがよほどいいかもしれない。

僕自身、映画を形にしていく手法について確証はもっていません。映画監督を目指す人がいて自主制作をしている人も多いですが、実情を言えば、映画監督という職業がいまは成立しない時代です。撮影現場でそう呼ばれていても、“映画監督”という肩書きで暮らせるわけもありませんし。

好きなことを仕事にすると余裕がなくなって、自分のやりたかったはずのことなのに嫌いになってしまうこともあります。

仕事というのを終身雇用みたいなものとして考えたことで、それが安定という名のもとに人を縛ってきた。

終身雇用なんていう幻想が消えた現代にあって、皆が不安になっている。縛られたら縛られたできつい、なくなったらなくなったで不安というわけです。

そもそも僕らは大きな資本からは相手にされない。しかし、だからと言って、僕らがやっていることは意味がないのか? 僕らがやっていることはそもそも「仲間を見つける」というプロセスそのものだと思っています。

諦めないで上映会をやり続けたら、「おもしろい」と言う人が現れ、またプロの俳優さんが「出たい」と言ってくれる、力を貸してくれる人々が沢山集まってきてくれました。

要するに映画を作り、上映する行為そのものが、仲間を見つける行為そのものなわけです。

「こういうやり方が正解だ」と思われている範囲から視野を広げたとき見えてきたのは、世界には自分たちと同じことをやっている人もいて、自分の試みがきちんと評価される場所もあるということです。

僕は映画制作集団「空族」の一員として映画を撮っていますが、空族は“正解”が嫌いです。社会というのは得てして“正解らしきもの”を振りかざして詰めよってくる。

それは目先だけを見つめていたら中々視野に入ってこない。仲間を見つけていくことは大事だと思います。

ただ、若い世代に「仲間を見つけろ」と言うのは、「夢をもて」というくらい、難しいことなのかもしれない。

だからもし映画を撮りたいと思う人がいるなら、まずは自分ひとりでやってみることだって今はできます。そこには必ず被写体がいるはずです。仲間を見つけてからじゃないと映画を作れないじゃなくて、映画を作る行為そのものを、仲間を見つける行為だと思って始めればいいんじゃないかと思います。

これは映画に限った話ではないと思います。何かをつくる行為は仲間を見つけることにつながることだし、それが物事をつくる原動力になっていくのではないか。そんなふうに思っています。              [文責・尹雄大フリーランス・インタビュアー)]

「仲間」という言葉にはいささか抵抗がある。けれど、期待も絶望もせず、平熱で自分の目の高さから課題に向き合う彼らの認識・姿勢は、頼もしくすがすがしい。
‥こんな腑抜けしか書けない年嵩の先達(管理人のこと)は、情けない。戯(たわ)けだ。