2ペンスの希望

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「残したい、伝えていきたい ‥ 」

思えば至極当然な話なのだが、映画だけが変わったわけじゃない。音楽も文学もあらゆる表現世界は様変わりした。管理人と同世代の音楽家=細野晴臣さんが最近のインタビューでこんな話をしていた。朝日新聞デジタル &W 2021.003.30「残したい、伝えていきたい音楽」】

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 「なんと今とは違う世界なんだろうとがくぜんとしてしまって。僕が好きだった音楽が失われてしまったことに気づいたんです。サウンドもプロダクションもヒットチャートも、みんななくなってしまった。僕らと同じ世代は覚えているけれど、アメリカ人ですら若い人たちは知らない。社会の変化、時代の変化とともに仕方がないことだとは思っていますが、でもやっぱりちょっとさみしいなぁ、と。

確かにそうだ。僕が好きだった映画は、スタイルもプロダクションもヒットチャートも、みんななくなってしまった。何もかも変わった。それでも「残していきたい、伝えていきたい」という思いはつのる、と細野さんは続ける。

 「ただ好きというだけではなく、残していきたい、伝えていきたいという思いも強くありました。誰かがやらないとなくなってしまう。だったら知っている人が伝えればいい。もっといいやり方があればそちらのほうがいいかもしれないけれど、とりあえず僕は今自分ができることをやっていこうかなと思っています。」

さらに続けて語る。

これまでは、作っているときは集中しているものの、終わるとほったらかしで、一体誰が聴いているんだろう?と思いながら暮らしてきました。それが、最近はちゃんと聴いてくれている人がいる、という認識を持つようになりました。それも、みんな真摯(しんし)に聴き、評価が深い。そういう状況を知り、絶対に手は抜けないなと。手を抜いたことはないんですけど(笑)。以前は僕が作った音楽を聴いているのは自分しかいないと思っていたんですよ、本当に。でも今は聴いてくれる人の声が届いている。そういう人たちのことを考えながら音楽を作るようになりました。

ただの回顧や懐古じゃないところがいい。今の受け手に向き合い、まだ見ぬ未来に繋げようとする姿勢に共感する。「残すこと」「伝えること」は、新しい映画の作り手が生まれるためであり、新しい受け手が育つためなのだ。ただの回顧や懐古じゃ意味はない。