2ペンスの希望

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見るとは‥

清岡卓行さんが好きだった。
出会いは高校の図書館で見つけた評論集『詩と映画/廃墟で拾った鏡』だった。
それからは、新刊書が出るたびに買って読んだ。詩から小説にフィールドが移ってからも変わらず、死ぬまで続けた。
素敵なフレーズはたくさんあるが、映画について考える時、いつも忘れないように携えてきたものが二つ ある。
どこから世界を覗こうと
見るとはかすかに愛することであり
病患とは美しい肉体のより肉体的な劇であり
絶望とは生活のしっぽであってあたまではない

【「氷った焔」詩集〈氷った焔〉(1959)所収】
もうひとつ
批評とはぼくにとって遂に 対象への
そこはかとない愛を語ることであるか?
ぼくに近づくな、ぼくから遠ざかるな
ぼくから一番よく見える所に立ってくれ
【「見知らぬ友に 」詩集〈四季のスケッチ〉(1966)所収】

先日、神戸にある女子高の図書館に行く機会があった。詩の棚を覗いてみたところ、思潮社刊行の「現代詩文庫」シリーズが200冊近くずらりと並んでいた。少し感動した。
読む人がいるかどうかは定かではないが、読める環境が整っているかどうか、これが大事なのだと思う。