2ペンスの希望

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本『七日じゃ映画は撮れません』

真藤順丈さんの『七日じゃ映画は撮れません』という小説を読んだ。【2014年3月10日実業之日本社刊】1977年生まれ ダヴィンチ文学賞などを受賞しているらしいが、初めて読んだ。題名の「七日」は旧約聖書「創世記」の天地創造を意識したものだった。578頁の長編。映画好きらしく、五月蠅いぐらい古今東西の映画のタイトルと註釈が挿入される。きっとある時期(今もか?)浴びるように映画を観てきたのだろう。『素晴らしき哉、人生!』から『追悼のざわめき』まで、古典ありカルトムービーあり、勿論ホラーアクションコメディなんでもありで、胃袋の大きさとマニアぶりをうかがわせる。
で、面白かったのは、登場人物の一人の台詞「ニッポンの映画が大好きだったんですよ。特に八〇年代とか九〇年代のが好きですよ。ハリウッドの大作にもヨーロッパの芸術映画にもない、ざらついたコクや旨味にあふれた邦画を主食にして大きくなりました」というくだり。本文ではその後1981年から1995年までの邦画のタイトルが6本列記されるのだが、ここに題名は書かない。(ご興味の向きは、本書463頁をご覧あれ。)
実は、ここで挙げられた映画、拙管理人は1本も観ていない。三十代から四十代にかけてで忙しかったということもあるのだが、「ざらついたコクや旨味」よりも 「ざらつかない普通に美味い映画」が観たいと思っていて一向に食指が動かなかったのだ。
若い頃、十代でどんな映画に出会うのかがその後の映画好きの形(原型)を決めるのだな、と改めて知らされた読書体験だった。