2ペンスの希望

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『日本の忘れ物』

5年前に企画を手伝った映画が、大阪九条のミニシアターで初めて劇場公開されるというので、いそいそと出かけてきた。
T監督の『日本の忘れ物〜塩飽諸島本島ものがたり』(2009年 72分)。 映画館は、シネ・ヌーヴォX。日曜日夜7時からの上映スタート故もあろうかお客さんは少なかった。
当時仕上げに当って監督さんに託したメモにはこう書いた。
忘れ物と聞けば、過疎化・高齢化が進む限界集落、離島が浮かぶ。ただ当たり前だが、彼らは、自分たちのことを忘れ物だなんてこれっぽっちも思っちゃいない。彼らからすれば、東京や大阪こそが遠い忘れ物だ。島にはショッピングモールも映画館もコンサートホールも無い。ゴミ収集車は本土からフェリーに乗ってやってくる。不自由と不便。しかし、日々当面するくらし以外に大事は無い。老人たちは無言で語る。彼ら・彼女たちはお互いに助け合いながら、淡々と老齢を生きる。そして、従容と死に赴く。強がりでも無理強いでもない。生身の日常がゴロンとそこにある。
そこで、提案したキャッチフレーズは、「島があり、人がいる。それだけのこと。」冒頭にクレジットされる。言わずもがなだが‥‥島とは生活手段のことであり、人とは関係性そのもの。人は毎日飯を喰い泣いたり笑ったりして、一人でそして誰かと、生きていく。
上映後挨拶にたったT監督は「予備知識なしに、てれーっと、作りたかった。願わくば、てれーっと、観て貰いたい。」と語った。
いつだったか、ねじめ正一さんが一本足打法王貞治選手を評して、 
気を抜かず 手も抜かず 力だけを上手に抜く」と書いていたことを思い出した。
そんな風情を目指した映画だ。
意図通り上手く出来上っているかどうか、お運び戴き検分(見聞?)戴ければ有り難い。
詳細は⇒http://www.cinenouveau.com/sakuhin/cyuhen/cyuhen.htm
1000円均一25歳以下500円。9月19日まで飛び石で5回上映されるのでヨロシク!