2ペンスの希望

映画言論活動中です

喋っていいシート パーティールーム

映画は一人で見る?誰かと一緒に見る? このやりとりは昔からあった。
誰かと行くと気を遣ったりストレスが溜まるので断然単独行という人もいれば、
見た後のおしゃべりが楽しみなので一人では出掛けたことがないという人もいる。
えっ、管理人はどちら派かって?95%一人派だ。
美術館には人を誘うこともあるが、映画は一人で楽しみたい方だ。本を一人で読むのと同じ‥と云えばお分かりいただけるだろうか?もっとも輪読や会読(読書会)という愉しみ方を否定するわけではない。誘われればいそいそ出掛けたりもする。
いずれ誰かと見ても、見るときは一人ひとり別々に受け取るもの、そう思ってきた。
それがどうやら事情が変わってきたようだ。
少し前からキネプレというウエブマガジンを読んでいる。キネマのプレス、略してキネプレ。関西の映画・映像情報を定期配信している。京阪神の独立単館上映情報やイベント告知などが送られてくる。そのキネプレが毎週配信しているキネプレイディオ(Cinepre Radio)でデリヘル美さん(♂)という人がこんなことを言っているのを聴いた。
(コミュニケーションの手段として映画を見るのなら) 映画が終わった後じゃなくて見てる間に喋りたい‥今見たこのシーンで感じたこと今すぐ言いたい(後ではダメ)というのがある、テレビなんかだと見ながらツイッターで感想つぶやいてコミュニケーション取り合うなんてフツーにあるのに、映画の場合は見てる間は人と人とのコミュニケーション取れない取りにくいというのがちょっともの足りない‥感じた瞬間に伝えたいという気持のライブ感がなかなか満たされない‥なので映画館に喋っていいシートとか、この上映会は喋ってOKみたいな映画会、見ながら喋りたい人が集まってくるってのがあってもいいんじゃないか、映画館にパーティールームみたいなのがあるのもいいと思う、飲食も自由もちろん見ながら喋っても大丈夫、自由に映画を見れる、そういう環境があるといいんじゃないか
ロートルは驚いた。
昨今の観客は、映画と映画館にそんな不満と期待を抱いているのか。
同じキネプレの過去のニュースで、歌って踊って盛り上がるインド映画のマサラ上映が大盛況だとか、コスプレで参加する映画上映が人気を集めているという記事を読んだことがある。大ヒットした『アナと雪の女王』では、劇場に雪を降らせスクリーンに合わせて一緒に歌ってOKの映画館も登場した。アニメ上映では子供たちの大合唱は当たり前の光景だ。3D4Dなんてのもある。息もつかせぬジェットコースター(ローラーコースター)ムービーなんて、テーマパークのアトラクション感覚で楽しんで悪い道理はない。
だから、デリヘル美さんの意見、とんでもない、とも、べら棒、とも、思わない。
昔々、斬り込みに行く高倉健池部良に「異議なし」の声が掛かったり、御用提灯の波と鞍馬天狗の登場に場内万雷の拍手が巻き起こったなんて史実もある。
表現である前に映画は体験なのだ。そう考えれば、時代による様変わりも受け入れられる。それでも、料簡の狭いロートルは隅っこでつぶやく。
お子様ランチや文化祭・学園祭ノリには乗りかねる。芳醇な酒は独酌で味わいたい。