2ペンスの希望

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贅沢な時代

春日太一さんが役者・仲代達矢にインタビューした本を読んだ。
仲代達矢が語る日本映画黄金時代」【PHP選書843 2013年2月 刊】
映画デビューは黒澤明七人の侍』だったと語っている。といっても僅か2秒ちらりと写るだけの「その他大勢」端役以下。仲代ファンにはよく知られたエピソードらしい。言われてみれば昔々耳にしたような気もする。
私は俳優座養成所の二年生の時、まだ二十歳ぐらいでしたが、『七人の侍』のオーディションを受けまして。ほんの数秒のカットでしたが、エキストラで出演しているんです。物語の序盤で、百姓たちが野盗から村を守る傭兵を雇うため、街中をスカウトして回るんですが、その目に留まる浪人の役でした。
それで、ヒゲも初めてつけて、ちょんまげも初めてつけて、刀も初めて差して。そうしたら黒澤監督が「君が先頭になって歩け」と。まあ私が一番体が大きかったからでしょう。
ところが、撮影が始まると「何だ、その歩き方は!」と黒澤監督に怒鳴られまして。何度やってもNGになるんです。そりゃそうですよね。新劇じゃそんなもも教えてくれませんし、そもそも着物を着たのも初めてですから。撮影が朝九時開始でそのシーンの撮影が終わったのが午後の三時頃でした。その間、何百人もの役者やスタッフを待たせて、ひたすら私が歩くシーンを何度も撮り直すんです。
まあ、その当時の映画界は贅沢なもんで、エキストラ一人にそれだけ時間をかけてくれたんです。
それで、ともかく役者は歩き方だと、とくに時代劇の歩き方はこういうもんだと徹底的にそこで意識しました。だからといって、すぐにできたってわけじゃないんですけど。
ただ、当時としては屈辱的でした。エキストラだから替えもいるのに、ずっと私だけに何度もダメ出しして撮り続けるわけですから。三船さん以下、みんなを待たせてね。「なんだ、あいつは」とか周囲から罵詈雑言は聞こえてきますし。「あいつにはメシを食わせるな」というようjなことを言われて。「あ、俺は映画に向いてない。まして時代劇なんてダメだ」と思うほど屈辱的でした。
」(62・63頁)余談だが同じシーンに宇津井健も出てる↓
贅沢な時代は過ぎた。再来は望むべくもないが、学ぶことはまだまだ埋まっている。 温故知新。孔子「溫故而知新,可以為師矣」グーグル翻訳では To know the A New Visit to old とあった。