『映画プロデューサー荒木正也 映画の香気 私のシネマパラダイス』【2022.1013. Echelle-1 刊】から その参:構造と造作
脚本は映画の「骨組み」=構造だ。演出・監督は骨組みをもとに細部まで技を駆使してこしらえる造作技術職である。達者に両方をこなす人もいれば、片方に特化して長けた人もいる。小林正樹は、後者の「鬼」だったようだ。
ドキュメンタリー映画『東京裁判』【1983年 277分 監督小林正樹 編集浦岡敬一 ネガ編集南とめ‥‥】について
「脚本を得てからの編集段階に入ると、小林さんは急に仕事に熱心になられました。やはり小林さんは、映画監督として現場の作業中心の人なのです。柱を立てる仕事ではなく、部屋を仕切ったり、壁を塗ったりする仕事には打ち込めるのです。編集の浦岡さんと、各場面の組み立てについて細かく相談しながら作業をすすめられます。小林さんは美学部出身ですから、細部については綿密にご自分の納得のいくまで完璧にしようとされます。」