2ペンスの希望

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鈴木さんの丁半ばくち

アニメはほとんど見ないのだけれど、巧妙な事前広告戦略に乗せられてまんまと劇場に足を運んだ。都会の駅前シネコン、平日の夕方、304席の大箱、公開三週間目を過ぎて50%以上が埋まっていた。こんな入りのいい映画館は久しぶり。

鈴木敏夫プロデューサーの発言を朝日新聞ウエブサイトで読んだ。

鈴木Pが語る「君たちはどう生きるか」制約なしの宮崎駿見せたかった:朝日新聞デジタル

一本の映画を公開する際の宣伝がすごいじゃないですか。僕自身もそういうことをやってきたので人のことは言えませんが、それに対する疑念がどこかにありました。自分が子どもの頃には、映画を見る時には、『今度東映でこういう映画をやる』っていったら、タイトルだけで見に行きましたね。誰が出るかということすら知らなくて、まっさらな状態で見ていた。行きすぎた宣伝をセーブして、一度その状態に戻したらどうなるんだろう。そう考えました(鈴木敏夫プロデューサーの発言。以下 同じ)

要するに逆張り戦術。宣伝しないで宣伝する。ジブリならでは、宮﨑駿だからこその手法だろう。「鈴木さんの丁半ばくちに俺はかける」とは宮﨑駿監督のコメント。よってこってリスクを分散させる製作委員方式がメジャー映画の大半を占める中、たった一人で打つばくちの快感、さぞかしアドレナリンが湧いたことだろう。鈴木Pは「製作費を回収できない映画を作りたかった」とも語っている。

本当か?嘘じゃないのか?製作費が回収できない映画なんて、誰が喜ぶ。誰が作りたいと思う。鈴木Pが「悪人気取りの嘘つき」「偽善者の対極の偽悪者」にも見えてくる。

   *  *

映画評は控えるが、一つだけ。

大人の鑑賞に堪える映画ではなかった。けど、育ちざかりの十代前半の若い人たちには刺さるのかもしれない。きっと鈴木Pも宮﨑Dも彼らに届くことこそが狙いだろう。「資産家階級・お金持ちのボンボン育ちゆえの負い目」「戦争絶対反対なのに軍事マニア・兵器オタク」Dと「稀代の偽悪者ばくち打ち」Pが仕掛けた「矛盾に満ちた大勝負」だとみた。

75歳のロートルには映画はぜんぜん「面白くなかった」けれど、あれこれイロイロ楽しませてもらった。コスパは悪くない。元は取った気分でいる。

【上記ウエブ:デジタル記事、映画を作ろうという若い衆にはヒントと刺激(挑発?)が満載。読んでみて】