2ペンスの希望

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なつのと冬実

よんどころない事情もあって「映画館」にはトンとご無沙汰してもっぱら漫画本ばかり読んでいる。といっても流行りで人気の新作なんかじゃない。中心は昭和から平成にかけての旧作セレクト集。漫画は若い頃からそれなりに目配りして読んできたつもりだが、まだまだ知らない沃野が拡がっていることを知った。

一番の収穫は、清原なつのさん。1959年生まれだから結構なキャリアのベテラン漫画家さんなのだが初めて読んだ。初期の「花岡ちゃんの夏休み」も良いが何といっても圧巻は『千利休』だ。(大きな声では言えないが、昔見た二本の利休映画よりずっと大きな構えで出来が違ってた。)

数年前に読んだ惣領冬実さんの長編『チェーザレ 破壊の創造者』も凄かったがそれに並ぶ力作だった。

西洋・イタリアの中世と東洋・日本の近世、ともに「権力・権勢の本質」と「文化・宗教との関係」を描くが、軍配は『千利休』に挙げる。肩に力が入り青筋立てた冬美さんの完璧志向より、なつのさんのほうが軽妙洒脱で軽み風味  しなやかな描線ながら奥行き深く感じた。したたかでベラボーでブラボー。

冬実さんとなつのさん、冬となつ、今回はなつの勝ち、なんて 痴れ言で失礼。惣領ファンの皆さんにはゴメンナサイ。