2ペンスの希望

映画言論活動中です

映画は建築に似ている

先に少し、映画は建築に似ていると書いた。
もう少し、詳しく書いてみる。

色々の専門家がそれぞれの持ち場に関って、みんなでひとつの建物を作る、という点で似ているといえば、分かりやすいだろう。
そのためには、きっちりした設計図と線引きの作業が必要だというのも同じだ。
釘や糊・接着剤をたっぷり使って作るものもあれば、ホゾを刻み、継ぎ手や仕口といった木組み技術を施して拵えたものもある。どちらも建築だといえば建築だ。しかしである。実際に住んでみれば分かる(筈だ)。体験すれば違いが実感できるに違いない。
こけおどし、見てくれだけが立派なハリボテ建築が目立つ。
中身スカスカ、居心地も使い勝手も悪い、アート建築が大きな顔で大通りを闊歩する。
(誰とは言わないが関西の著名な建築家Aさん設計の建築物は どこへ行ってもすこぶる評判が悪い!‥っと、これはまた余計な話。
脱輪 御容赦 <(_ _)>(←平謝りの絵文字のつもり。人生初絵文字!)

木皿泉さんという神戸在住二人組のシナリオライターが居る。
彼らのエッセーにこんなくだりがある。
映画やシナリオについて語った部分ではないのだが、示唆的なので引用させて戴く。
ちなみに、「大福」さんは、漫才・テレビの構成作家から出発した男性、「かっぱ」さんは商社勤務のOLを経てシナリオを書き始めた女性。
引用は、彼らのエッセー集『二度寝で番茶』(2010年10月3日 双葉社刊)より‥‥
大 福 それにしても無駄なもの、買わされてますね。
かっぱ マンションの改装で部屋をことごとく壊したじゃないですか。その時、つくづく思いましたよ。私達は口当たりのいいもんにだまされているなって。(強調 引用者)元の部屋は床暖房が入っていて、食洗機がついていて、物入れの扉は大理石風素材に金色の把手がついていて、高級感をかもしだしていたでしょ?でも、一皮めくると、和室の天井は木に見せた紙だったし、押入れの中も石膏ボードに木目の紙を貼っただけのものだった。桟は木じゃなくて、木屑を圧縮したものに木目を印刷した塩化ビニールを貼っているから、上から色を塗ることもできない。結局、全部外して捨てたんだけど、塩ビを貼ってあるから燃えないゴミになってしまって、捨てるにもお金がかかってしまった。安い木材もあるのに、何でこんな手の込んだことをするんですかって大工さんに聞いたら、現場の人件費を浮かせるためなんですって。
大 福 どんな安物でも木を使うとなると、大工さんに頼まきゃならないけど、そういう材料なら接着剤で貼るだけでいいから、技能を持たない人でもできるんでしょうね。
かっぱ 私達の前に住んでいた老夫婦がこのことを知ったらショックだと思うなぁ。家が傷まないよう、ものすごく気をつかいながら住んでたのに。陽に焼けないよう敷物をしいていた畳なんか、めくったら厚さ一センチ程のペラペラのニセモノだったし。

また、長くなってしまった。

ゆるぎなく、それでいて、ゆったりと、ゆたかな「遊び」をもった設計図を作ること。

時代の風が吹き抜けていく中で、いつまでも古びず、愛され続ける建物を作ること。

ひとつの建物がランドマークとなり、界隈に新しい活力が生まれる…そこに若い季節が始まり、人間の知恵と技術と経験が受け継がれていく…そんな建物を生み出すこと。

それが願いだ。

必ずしもその方向に進んでいないとすれば、なんとかしなくっちゃぁ‥。嘆いてたって何も始まらない。