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notes 3 シンプル

《ご近所大長征》note−その三は、「シンプル」

映画の仕事には幾つものパートがある。演出部と制作部。小さな現場に限らず、今では助監督が制作助手を兼ねるケースも増えているが、仕事の内容は厳然と違う。駆け出しの頃は、区分けが分からず困った。ある時、先輩がこう教えてくれた。
「ええか、カメラのフレームの中のことをやるのが演出部の仕事、フレームの外のことをやるのが制作部や」単純明快で、わかりやすく、感心した。小道具や美術の注文・調達は演出部、宿やメシの手配は制作部、なるほどな。プロの言葉は、的確で簡潔なもんなんや、と今も印象に残っている。

そぎ落として本質を鷲づかみした「シンプル」は、強い。
吉田健一は言っている。
「一般の考へに反して言葉の用ゐ方が的確で微妙であればある程その意味は幾通りにもなる」(「何も言ふことがないこと」;筑摩書房『言葉といふもの』所収)
幾通りにもなるとは、あいまいで分かりにくくなるのではない。奥深くなるというのだ。
痩せるのではなく、ふくよかで豊かな「シンプル」を目指したい。
もうひとつ、
いのうえひさしの知られた言葉。
「むずかしいことをやさしく,やさしいことをふかく,ふかいことをおもしろく,おもしろいことをまじめに,まじめなことをゆかいに,ゆかいなことをいっそうゆかいに」(劇団「こまつ座」機関誌「the座」寄稿)
こちらも正論だが、ちと長いか。 
simple is best ってどこかのコマーシャルにあったっけ?‥?