2ペンスの希望

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精神だけを真似る

和暦と西暦を書いたせいでもなかろうが、
アメリカの白黒映画に並べて、日本映画も載せたくなった。
とはいえ白黒映画しかなかった時代のものではない。とっくにカラー映画が全盛(当時は「総天然色」なんて表記されていたっけ)になってから敢えて作られた
和田誠第一回監督作品『麻雀放浪記』1984年(昭和59年)
昭和から平成の今まで映画界以外のカントクが映画を作る例は掃いて捨てるほどある。その大半が目も当てられない大失敗に終わるなか、ほとんど唯一の成功例ではないかと拙は思っている。[注記:下記埋め込み 無効になっているとのこと。YouTubeに見に行くと2分ほどオープニングが流れます。その後は自己責任でヨロシク]

今ならCGでやるところだろうが、ミニチュア撮影で工夫している。バックに流れる曲は、岡晴夫の「東京の花売娘」。
熱烈な映画ファンとしてつとに知られた和田誠さんは制作直後の山田宏一さんのインタビューにこう答えている。
和田  どうしても映画ファンが映画をつくるときに陥りやすいのは、あの映画も好きだ、この映画も好きだ、という気持ちがあるから、あの映画この映画のシーンを具体的に取り込んじゃいたくなることだろうね
山田  そういう危険性は和田さんがいちばんよくわかってると思う。
和田  気に入ったせりふを使うとかいうことじゃなくて、気がきいたせりふが必要だということだけを、真似するわけでね。
山田  つまり精神だけを真似する‥‥。 
            【1985年キネマ旬報第833号記事「観客の椅子・監督の椅子」】
M谷K喜センセにも聞かせたいコメントだ。