2ペンスの希望

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所作

針畑生活資料研究会(略称:針研・はりけん)という会がある。 1974年から旧滋賀県高島郡朽木村針畑川流域の生活文化財の調査研究を行っているグループだ。記録のために、最初は8mmフィルムで、次に16mmフィルムで、そして最近はデジタルビデオを回して、村の暮らし、日常を四世代にわたって撮り続けている。倦まず弛まず。
研究会の趣旨にはこうある。
森や谷の恵みの暮らしから生み出された生活用具(デザイン)に視点をあて、村の人々の「知恵」と生活史の記憶を記録する。
【針研のHPは http://hari-ken.jimdo.com 】
完成した映画は、十篇をゆうに超える。機会があって、
そのうちの一本『テゴをつくる』(1984年 16mm B/W 28分)を再見した。
ワラ仕事のひとつテゴ(腰につける採集・携行具:手籠?)作りを記録した映画だ。
テゴが出来るまでの様子が淡々と克明に描かれていく、ただそれだけの映画。端正な白黒画面が美しい。
ワラといえば、今では稲作の廃物であるかのごとき印象があるが、かつては「ワラをつくるために稲をつくる」といった生活の価値をもっていた。」チラシの文言だ。
カメラが捉えた農婦の手業の鮮やかさ。流れるような動きには、無駄も無ければスキも無い。それでいて、観る者を惹きつけて已まない豊かさがあり、くつろがせるリズムがある。仕事の必然から生まれる遊び、 とでも云おうか。
上映後、監督の丸谷彰さんはそれを「所作が美しい」と表現した。所作! 久し振りに気持ちの良い言葉を聞いた。所作の美しさが問われるのは、映画もまた同じである。