2ペンスの希望

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「開ける」工作

先日先輩に誘われて演劇を観て来た。嶽本あゆ美:作 藤井ごう:演出『太平洋食堂』。900席あまりの大ホールが8割近く埋まる盛況だった。普段観客一桁の映画館ぐらしからはうらやましい光景だった。ただ気になったのは、観客層だった。
そこで先輩に感想メールを送った。
「気になったのは、観客の多くが関係者というか、演劇の題材になっている歴史的事件(今回で言えば「大逆事件」)に関心を持つ人や、支援団体の方々だったことです。
止むを得ないことだし、だからいけないというわけではさらさらないのですが、この限界をどう突破するのかが永遠の課題のひとつですね。映画も同じです。
最近特に、知っていること、聞いたことがあることにしか関心を示さないし、足も運ばない、という嘆きをよく聞きます。
題材・主題を超えたインパクト・吸引力・訴求力・破壊力をどこに見つけるのか、です。」
先輩からの返事にはこうあった。
今の時代にマスで賛同できるというメディアは ないのではと思います。
テレビでさえ マスとしての存続が危うくなっています、みんなが自分の視点で 物事を見ようとしていると思います。
それが マスとしての新しい政治状況を作るのだと思います
ネットは全く個的なメディアなのですが 時としてマスになります
演劇は ライブで有り 声の届く範囲でしか成り立たないメディアです
その点からいえば 超ミニメディアです。そういう演劇を楽しむ層が増えてくる と、世の中いろいろと、楽しくなると思います
作り手サイドにたてば、演劇というのは 映画でもそうだと思いますが すぐれた 作家と演出家がつくるメディアです。

キャッチボールの球を返した。
「 「今の時代にマスで賛同できるメディアはない」というのは、おっしゃり通りですね。
「すぐれた作家・演出家がメディアをつくる」というのもその通りだと思います。
ただ一点、
「そういう演劇を楽しむ層が増えている」のかどうかについては、まだ疑問ありです。
動員やクチコミの力を信じないのではありませんが、
個々それぞれの「文化」ではなく、一過的でもいいいから「ブーム」を作り出す戦略・戦術も携えて行きたいと考えてしまいます。
関係者・ファンに「閉じない」こと、「開ける」工作を続けること。
映画の世界で気になるのは、技術的・コスト的に作りやすくなった分、
自足的で「閉じた」楽しみ方ばかりが増えていることです。
それをしも、多様性、裾野の広がり、と評価すべきなのかもしれませんが‥。
いずれにしろ、頭を低くして腕を磨き続けるしかありません。」