2ペンスの希望

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常温保存&平熱賞味

暫くサボった。このところずっとメディア・表現方法の違いについてチマチマ考えている。

或る青春スポーツ小説を読んだ。500頁を超える長編小説だ。  知らなかった。
評判が高く熱烈なファンも多数居るようで、漫画になったり、舞台化され、映画にもなった。題材に選ばれたスポーツは、個人競技でありながら、チームプレイでもある「駅伝」。それも「箱根駅伝」を目指す若者10人の物語だ。こう書くと、スポ根イメージが浮かぶかもしれない。が、読後感は、意外と「哲学的・思索的」だった。
ということでDVDを観た。
熱烈ファンの一人(らしき方?)のブログに拠れば、「原作>舞台>漫画≧映画」という評価だった。(ご当人はあくまで私的な評価だと断っておられる。)
原作は500頁強の長編小説。舞台は3時間、漫画は長期連載ののち全6巻で単行本化された。それに比べて映画は2時間ちょっとだった。(他にもラジオドラマもあり、これも5日間の連続放送だったみたい。)
くだんのブログ氏はこう書いていた。「映画はとにかく尺が足りないってのが残念。長編小説を2時間ちょっとで描き切るのには限界があるなって。せめて舞台と同じく3時間くらいあればいい。(←そんなのムリ)
確かに。長編大河小説映画化の第一ハードルだろう。しかしそれは先刻承知のこと故、言い訳も泣き言もきかない筈だ。
ブログ氏の指摘で面白かったのは、登場人物のキャラクター設定・造形の違いへの言及だった。以下青字はブログ氏からの引用。
箱根駅伝挑戦の言いだしっぺでリーダーのハイジは、舞台版では「感情あらわに怒るわボロボロ泣くわ、割と直情的」 それに対して映画版は「一貫して泰然自若
これは「単に俳優による演じ方の違いだと言われればそれまでかもしれませんが、
根幹には「生もの(演劇)」と「映像」という異なる表現方法における客への伝え方の違いが如実に現われてるように私は感じたのですけど・・・
だから舞台版のアオタケメンバーは基本的に「アツい」んだろうなあ。

おっしゃるとおり。舞台では「アツさ」で目の前の観客を巻き込み惹き付ける手法が比較的有効なのだろう。映画ではそうはいかない。登場人物たちがアツく盛り上がってばかりでは、観客は置いてけぼり。白けて引いてしまいかねない。演劇が直情的なら、映画はもっと屈折的・懐疑的なのかも。眼の前には二次元のスクリーン(モニター?)があるだけだ。距離も時間も遠いことを前提にした方が良い。
映画は、生ものではなく、練りもの。アツいうちにふーふー言いながらいただくというより、「常温保存」「平熱」で賞味するものなのだろう。
【このブログ氏の全文ご興味のある向きは以下で読める。http://yaplog.jp/minminmushi/archive/284 原作と舞台版と映画版の台詞・写真等詳細な比較があって楽しめる】