2ペンスの希望

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新しい天体

作家・開高健に『新しい天体』という本がある。食の現場の食べ歩きルポルタージュだ。タイトルは、ブリア=サヴァランの『美味礼讃(味覚の生理学)』にちなんだ命名である。
美食家サヴァランはこう書いた。
新しい御馳走の発見は人類の幸福にとって天体の発見以上のものである。」 
異議なし。激しく同意する。
新しいご馳走の発見 > 新しい天体の発見。
映画は建築や食事に喩えられる。同じ食材でも料理人の腕次第。栄養価がどれほどに高くとも不味い料理より美味い料理で食べたい。前味中味後味も大切なら、何処で誰と食べたかも重要だ。長く記憶に残る食事もあれば、すぐに忘れてしまうもの、忘れてしまいたいものもある。映画好きにとって、新しい美味・映画との出会いは、天体の発見以上のものだ。確かに。間違いない。ただし、だ。
食通が幅を利かせ、B級はおろかC級D級‥はてはZ級トンデモ版までが持て囃される風潮には同意しかねる。悪食、ゲテモノ食いはどこにも居るが、勝手にやってくれ。