2ペンスの希望

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『息の跡』

『息の跡』という記録映画を見てきた。
森はるかさんという28歳の映像作家が撮った長編第一作。好感の持てるつくりで、面白く見た。悪くはない。悪くはないが良くもない。手放しで褒めるほどではない、そう思ってしまった。映画は作り易くなった分、いよいよ作り難くなったなぁ、強くそう感じた。
難儀なことだが何とかするしかない。
予告編を挙げる。

いたし方なのだろうが‥この予告編、説明的で思わせぶりなつくりで感心しない。
映画はもっと率直で思索的だ。
劇場で目にしたチラシに有名無名さまざまな人の推薦コメントが載っていた。
小野和子さん(民話採取者)の文章が一番だった。
土地の人の目には「変わり者」と映るかもしれませんが、たね屋の佐藤貞一さんを
小森さんはその深い悲しみごと、ざっくりとすくって下さった。それを見せて下さった。
そんな気がしました。
記録者として、そして何よりも「表現者」として、これからもたくさんの出来事にぶつかっていかれることでしょう。
(小森が個人的にいただいた書簡より)
「距離」というキイワードが浮かんだ。
記録と表現、取材者と被写体、土地の人とよそ者、大人と大人以前、被災地と他の地、此岸と彼岸、震災前と震災後、さらに続く長い時間、‥‥いまここ と いつかどこか ‥
neoneoというウエブマガジンの103号に小森はるかさんのインタビューが載っている。http://webneo.org/archives/42170
いまここにあるものを撮ることしかわたしにはできなかった。
編集で人に見せる映画にする。」etc.
作ることと見せること(魅せること)の距離(径庭)、その眩暈するはるけさを思い知る。