2ペンスの希望

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映画は「空間芸術」である

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永らく映画は「視覚芸術」だとされてきた。ヴィジュアル・アート。はたしてそうなのだろうか。いや、そうではなく むしろ「空間芸術」の一種なのではないかーそんな思いに囚われている。

映画は、外から眺める「視覚芸術」ではなく、内側に入って体感・体験する「空間芸術」である。

だからこそ映画館という「容器」が必要とされてきたのだ。人は何故映画館に出掛けるのか、あれこれ考えてきた。見知らぬ他者との共存・共同性とか、闇の集中性とか、我を忘れる忘我・脱自(エクスタシア)とかとか。

体ごと入り込んで、丸ごとたのしむ。立体映画や体感シアターの試みが古くから試みられてきた由来もここらあたりにあるのではなかろうか。映画と建築のアナロジーがしっくりくるのもそのためではないか。建築が遠く外から眺めて楽しむと同時に、内部に入り込み包まれる空気感にひたり感応するように、映画も「空間」をたのしむものなのだ。

忘我や脱自を超えて、没入・没我、無我夢中ということばがよりふさわしく見えてくる。

スマホであろう何であろうと、思わず知らず引き込まれ、時を忘れて止まらなくなる逸品に出会えれば、それは僥倖というものだ。