2ペンスの希望

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嫌いじゃない けど

テレビは嫌いじゃない。好きな方だ。とはいえ連続ドラマのたぐいは永らくご無沙汰だ。ところが最近、ひょんなきっかけで毎週の放送を楽しみに待つ番組が出来た。つい先日最終回を迎えるまで、いそいそと観た。売れっ子シナリオライターの新作。悪くない、いや、良く出来てると感心した。役者陣もなべて達者、キャラのはっきりしたキャスティングで分かりやすく皆伸び伸びと演じていて気持ち良い。

速射砲・機関銃テンポの会話ドラマ、気の利いた台詞のやりとり、ショートコントの数珠繋ぎ‥、スマートでスピーディーな展開‥‥ジェットコースター仕様。小ネタ、細かな目配り、ディテールのくすぐり、などなど、ポストイットベタベタ満載ドラマ。「あー面白かった」でいいのならこれでOK、文句なしだ。上手い。

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けど、映画じゃない。じゃあ、映画ってなんだろう。

少なくとも「アルアル」の羅列、列挙じゃなかろう。むしろ、ワカルワカルの共感を超えた「ナイナイ」の提示、その有無を言わさぬ力技=「拉致・誘拐」につらなる何か、そう思っている。

空族の富田克也さんの言葉を思い出す。

日本で作られる映画って、遊園地やテーマパークぐらいは連れてってくれるけど、旅に連れだしてくれるような映画はなかなかない。『映画はどこにある インディペンデント映画の新しい波』【フィルムアート社2014年2月 刊】(富田克也

もっとも「あー、面白かった。」で楽しんで「何も残らない。」それもまた楽しみ方の一つ。それで良いのかも‥。否定はしない。ポップコーンムービーという言葉だってある。只見のテレビドラマにいちゃもんつけるのは野暮、無いものねだりだとは、承知している。ただ、テレビと映画は、全くの別物。上下じゃない。比べ物にはならない。比べてはいけない。そう言いたかっただけ。