2ペンスの希望

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颯爽&清潔

昨日の続き。座談会「映画と文学」(1947年 春)

小説家と映画監督、当時は結構交流が盛んだったようだ。谷崎潤一郎のように

映画会社の顧問を務めた例もある。志賀直哉もかなりな映画好きだった。

研究者によれば、この座談会で小津は初めてこの敬愛する文学者志賀直哉に出会っている。その後、親交は深めている。

後年『お茶漬の味』を観た志賀直哉は「非常に面白かった、一番感心したのは画面が清潔できちんと整理されていてとても美しく感じた、そして何よりもいいと思ったことは、後味が非常に気持ちが好いことだ」と語っている。

カメラ位置の低さ・ローポジションについても、「あの位置は非常にいい。あれで全体がきちんとするんじゃないのかな。」と評価する。見巧者だったのだろう。

一方、小津は志賀直哉の全集本に「志賀先生にお目にかかると、いつも、それからしばらく、なんとも云へない爽やかな後味がのこって、僕の心のどこかを、涼しい風が吹き抜けます」という推薦文を寄せている。

20歳の年の差を超えて、互いによき理解者だった二人の颯爽&清潔。佳き哉。

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