2ペンスの希望

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『の・ようなもの』

「デビュー作にはその後のすべてが詰まっている」という言葉を必ずしも信じているわけではない。けど、森田芳光監督映画は世評に高い『家族ゲーム』より『の・ようなもの』のほうが断然好きだ。

没後、パートナーだった三沢和子と宇多丸が編んだ『森田芳光全映画』【2021.9.16 リトルモア 刊】を読んで改めてそう思った。

ハッタリ混じり、自家薬籠中の一番勝負。封切りで見たことを思い出す。


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「道中付け」『黄金餅』「のようなもの」『居酒屋』‥‥落語と風俗、VAN、‥‥ポスターも当時としては洒落た感じだった。

森田芳光全映画』には「の・ようなもの」制作にまつわるアレコレがたっぷり語られている。資金調達、出口(公開)戦略、出演者交渉、予算組み、スタッフ編成、‥‥あとには引けない3000万円(の借財)、やっぱり 現場の声が一番だ。「映画は一つの試合と同じですが、完全な敗け試合を大逆転」という森田自身の声も響く。

もう ひとつ。

1970年代初め 青山学院大学のアンチ商業映画の8ミリ女子だった芹澤明子(現在 撮影監督)が学生時代に通った「モリタクンチ」(渋谷道玄坂上ル円山町ホテル街一角にあった料亭の離れ)のエピソード =「森田芳光監督が「監督!」と呼ばれる前の青春の一コマ」も胸熱。