2ペンスの希望

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黄昏‥‥⑬

⑬は森﨑東 1927(S2)年11月 生。

上野昂志の文章はいつなんどきでも具体的だ。間違っても、小難しい単語を並べもったいぶった言い回しで難解な理屈をこね回すような物言いはしない。映画を見ていなくても、映像が目に浮かぶ。たとえば、『ロケーション』(1984年 松竹)

森﨑東の映画を見ていると、むろん、いつもというわけではないけれど、男の尻を見せられることがある。たとえば、『ロケーション』(一九八四)などでは、それこそ、タイトルが終わったかと思うとすぐさま、西田敏行が、〽走れエイトマーン、とかなんとか歌いながらパンツを脱ぎ、こちらに、そのいかにも中年男ふうの厚みのある尻を見せるのだ。もちろん、西田はその尻を、見せたいがために見せているのではなく、シャワーを浴びるために裸になるから出しているのであるが、それでも、いったい何故尻なのかと思ってしまう。

おそらく、そのことを森﨑に問えば、彼はこともなげに、風呂に入るには裸にならなければならないし、そうなれば尻が見えるのは当たり前でしょう、と答えるに違いないのだ。しかし、いうまでもなく、それは現実においてならともかく、映画にあっては決して当たり前のことではない。見せまいと思えば、いくらでも、見せないようにできるのであり、たいていの映画はそうしているのである。それを見せるのは、やはり彼が積極的に尻を見せたいからだ。