2ペンスの希望

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技術vs人間❷ 被写界深度

「技術は進化し、人間は劣化した。」続ける。

被写界深度」という言葉がある。 ピントが合っているように見える範囲のことだ。

「浅い」とピントの幅は狭く、「深い」と広い範囲にピントが合い、画像はボケずクッキリ鮮明になる。ポイントは三つ、被写界深度は「絞り値(F値)」と「レンズの焦点距離(広角~望遠)」と「被写体との距離」の掛け合わせで決まる。できるだけ広角レンズで、シャッタースピードを長めの設定し絞り値を絞り込めば絞り込むほど被写界深度は深くなる。

フィルムもレンズも感度が低かった昔は、被写界深度を深くするために膨大な照明ライトが必要だった。それが撮像センサーの格段の進化やカメラアプリ機能の充実で、少ない光量で被写界深度を上げることが可能になった。今のスマホのカメラにはおおむね広角レンズが付いている。しかし、だ。

こうして、カメラの機能に頼った結果、もともと人間に備わっていた「被写界深度」の幅は、浅く狭くなっちゃったんじゃなかろうか。見たいもの・好きなもの・自分に都合の良いものだけにピントを合わせて、あとは見ない。背景はぼかして、なきものとされ、かえりみられるなくなった。気のせいかもしれないが、そんな風潮を感じる。

他人は他人、認めはするが、我関せず。関わらず。手元近くはクッキリはっきりだが、遠くはぼんやり。そもそも遠くなんて見ない。見えない。見ようとしない。それで大丈夫だろうか。寂しくないのだろうか。