2ペンスの希望

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技術vs人間❹ Bokeh

「技術は進化し、人間は劣化した。」さらに続ける。

「Bokeh」という英語をご存じだろうか? 発音はそのまま boke:bóukə:bɒkɛつまり「ボケ」、「ピントが合っていなくてぼやけていること」を意味する写真用語だ。今では日本語由来の世界共通語として定着し、市民権を得ている。

もともと「ボケ」を表す英語は「blur」や「out of focus」だった。

  • blur」は「写真上でハッキリしていない部分、かすんだ ただのぼやけている箇所」あるいは「不注意や被写体の動きでピントが合っていないブレ」の意味
  • 「out of focus」はそのまま、(本来合うべき)写真のピント面がボケてしまうこと。「ピンボケ」と同じような意味

どちらかといえば、あってはならないこと・排除すべき良くないこと、マイナスの意味で使われてきた。

「Bokeh」は違う。ボケ味を楽しみ、ボケの質をあれこれ吟味賞玩することを推奨する積極評価言葉だ。

鑑賞すべきプラス要素としての「Bokeh」、味わいとしての「ボケ」は、日本人独特の感性・美意識から生まれ、世界に受け入れられていったようだ。

ネットでこんな記事を見つけた。

日本の写真愛好家たちは昔からさかんにレンズの持ち味を研究していた。レンズはピントが合っていない部分にも美しさがあることを、日本人は早い時期から知っていた。単にシャープに写るだけなら、そんなレンズは風情がない。見えるようで見えないような、淡々としたぼけ具合にレンズの味わいを感じる…。いかにも日本人的な感性。その感性が、世界で静かに支持されている。Website:「東京オルタナ写真部」コラム「ボケ!は世界の共通語」

ボケが硬いとか柔らかいとか、ボケ味・ボケ足とか、前ボケ・後ボケ・玉ボケ、丸ボケ・年輪ボケ・玉ねぎボケ・二線ボケ・絞り羽根ボケ・グルグルボケ・小絞りボケ、‥‥様々なボケ、その美醜‥‥「繊細微妙なニュアンスを味わい尽くし、愛でる感性」が鈍くなったり、失われつつあるのなら悲しいことだ。