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「シーズン3」

神戸の元町映画館が新しい試みに挑んでいる。支配人制を廃止して「みんな」で運営し、進化するミニシアター「シーズン3」だ。灯台下暗し、地元民なのに最近まで知らなかった。)元町映画館の二代目支配人林未来さんが毎日新聞兵庫版に不定期連載されている「KOBEシネマこぼれ話【8】2023.2.5.」掲載記事で最近読んだ。

左から 林(高橋)未来さん 高橋勲さん 石田涼さん

以下、記事から無断引用する。(未来さん ご容赦!)

ミニシアターは、映画のことなら何でも知っている〝名物館主〟が運営しているイメージがあり、映画館の名前と館主の顔がほぼイコールになっていることも多い。ところが元町映画館は「俺の映画館だ」というスタンスを一切取らずにいたことで「みんな」で作り、「みんな」で運営しているミニシアターになった。

(そもそもが)映画を愛してやまない医師・堀忠が発起人となり、映画好きな仲間を集め、みんなで資金を出し合って作った映画館だ。開館は2010年8月21日。現場の支配人は神戸映画サークルのメンバーであった藤島順二が務めた。現場はこの藤島と、映写スタッフとして、現在代表理事を務める高橋勲、私(林未来)の3人でスタートした。開館から3年を経て藤島が退任、私が支配人を引き継ぐことになった。コアな映画ファンだけではない広い客層に来てもらえるよう、自分にできることで工夫を重ねた。編成の担当が変われば映画館の纏(まと)う空気も変わる。私が支配人を務めた9年半は、元町映画館シーズン2だったといえる。

そして2023年から、番組編成を石田涼という若いスタッフに引き継ぐことにした。かねてより編成は今の時代を今の目線で見ることができる世代が担当するのが理想と考えていた。私も50歳に近づき世間の動きに疎くなっている自覚があり、誰かにバトンを渡したいと思うようになっていた。その思いを話すと石田は編成を引き受けてくれたが、「支配人はやりたくない」とはっきり言った。

映画業界の課題のひとつに、労働問題がある。給料に見合わない労働時間という実態が「好きの搾取」ではと取り沙汰された。そこから従業員の労働環境に気を配るようになったところも多いが、支配人たちの環境は改善されないまま、過重労働が常態化していた。石田の言葉はそのような状況を見てのものだったのだろう。

今後の担当業務について話し合っていたところ「支配人を廃止しよう」と高橋が突然言った。そして臨時総会であっさり認めらて、元町映画館から支配人はいなくなった。4人の専従スタッフはそれぞれが担当する役割を持ち、「責任者出てこーい!」という事態には、代表理事である高橋が対応する。私は物品や書類の発注管理と、企画・広報を担当。シーズン3の幕開けである。元町映画館は「みんな」で運営しているからこそ、どんどん有機的に変化し進化していく【引用はすべて、毎日新聞2023年(令和5年)2月5日(日)18面より。文章は勝手に一部改変。順序も変えている。また 太字強調は引用者。】

これを機に「旧姓で仕事をしてきたが、戸籍名の「高橋」を名乗ることにした」未来さん、石田涼さん、そしてなにより「シーズン3」にコングラッチュレーションの三乗 謹呈。