2ペンスの希望

映画言論活動中です

ベストテン

やっぱベストテンなんておかしいと思う。個人で何をどう評価しようともちろん勝手だ。自由にやればよい。とやかく言う筋合いはない。しかし、一年を区切って、映画評論家を名乗る者が年間のベストテンを選んで公表するというのは如何なものだろうか。
だってそうだろう。年間に作られる映画に全部目を通している人間なんていない筈だ。(もし俺は全部見ているという人がいたら素直に脱帽する。)誰しも自分が観た範囲の中から選ぶしかない。いや私は見た範囲に限って「自分の」ベストテンを選んでいるだけ、それを集計し発表しているのは雑誌社、文句は雑誌社に言ってくれ、そう言うのかも知れない。理屈はそうかもしれない。雑誌社から選者に選ばれることが気持ちよくて余り深く考えずに引き受けている向きもおありだろう。ベストテンなんて所詮お遊び、それを目くじら立ててあげつらわれても迷惑千万‥そんな声もありそうだ。しかし、大人げ無いかもしれないが、野暮を承知で言いたいことがある。お遊びに興じているうちに、映画の土台・棲息基盤が消滅していくことを放置していて本当にいいのかい。ベストテンにうつつを抜かしている間に、映画の瀕死貧血が進み、痩せさらばえて朽ち果てても構わないのだろうか。いや、それは見解の相違、情況認識の違いだ。日本の映画界は決して衰退していない、そう主張する人がいたら是非お目にかかりたい。業界のジリ貧は今に始まったことではない、今更じたばたしたって仕方が無い。一度死滅して、その上で、もし求められるものならきっと「再生する」その方が健康的だ。そういってしまいたい誘惑にかられる。ことほど左様に情況は末期的だ。そのことに目をつむって、ベストテンを選ぶなど、やはりおかしい。管理人はそう思う。
年度ごとで区切ることもナンセンスなら、そもそも多様な成り立ちで作られた映画を順位付けることそのものが不当な振る舞いではないのか。
ハレの祭りより、ケの惨状を注視して何が出来るかを考えたい。