2ペンスの希望

映画言論活動中です

切(せつ)

映画の成分・要素・組成について考えている。
昨日浮かんだ、「切(せつ)」は、そのひとつのつもり。
切(せつ)とは、切実であり、大切。やむにやまれなぬ想い、のっぴきならない事情。
切(せつ)‥切実 切迫 切羽 切々 切望 切願 切に願う、
大切 哀切 痛切 懇切 ‥‥

「必然」というほど、くっきりはっきり、輪郭が明快なわけではない。もっと、名状しがたく、逃れようもなく、差し迫った言葉だ。映画の中にあるだけではなく、映画を取り巻く様々なものに纏いつく。これがあると、映画に背骨が入り、艶がでる。
切ない、切なさ という言葉もある。
悲しい、寂しい、とはちと違う。もう少し強くて激しい。うずく 苦しい 狂おしい。
やるせない いたたまれない 割り切れない 
‥‥要するに 持っていき場がなくて胸が一杯になること。切ないとはそんな言葉だ。必至のパッチという暑苦しさはない。
ときにほろ苦く甘酸っぱい匂いもするが、当事者たちには、それを楽しむ余裕はない。
全国各地に、「徒然(とぜん)ない」という言葉があるが、これも近い。
所在無いというだけでは足りない。身もだえするほど身の置き所がない、いたたまれない、といったニュアンスを孕む。
古文には、「あはれ」や「をかし」といった言葉がある。
かつて橋本治さんは、「あはれ」=「ジーンとくる」、「をかし」=「すてき」と
見事な現代語訳を披露した。
切ない=あはれ=ジーンとくる
切なるものを持たない映画には、ときめかない。
ということで、
「切(せつ)」を、映画の成分その1として挙げてみた。