2ペンスの希望

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フィールドワーク?参与観察?

本質(的な営為)はまったく変わっていないのに、風景はすっかり変わってしまった。
映画の世界だけの話ではない。事情は活字の世界も同様らしい。
ルポルタージュ本が好きで昔からよく読んできた。好きなルポライターも沢山いた。
かつては専門のノンフィクション・ライターが手間暇をかけて取り組んできた。最近は学者・研究者、素人が探訪記事を書くことが増えているようだ。
廣末登『若者はなぜヤクザになったのか 暴力団加入要因の研究』【ハーベスト社2014年7月 刊】、北条かや『キャバ嬢の社会学』【星海社新書43 2014年2月 刊】を立て続けに読んだ。前者はA5判ソフトカバー300ページを越える学術書。博士論文に加筆・修正したもの、冒頭には学位請求論文の指導教官の序文が載っている。後者は新書判220ページの軽装だが、こちらも修士論文をリライトしたものだった。筆者は、二人とも若手の研究者、それぞれに自分たちの仕事を、フィールドワーク、参与観察と称している。昔は、潜入ルポといったものだったが‥いつの間にやら、包装紙が変わってしまった。プロのライターが退潮し、研究者や新規参入者が跋扈する時代。悪い時代だと言いたいわけじゃない。二冊ともそれなりに面白く読んだ。参入障壁が低くなるのはむしろ好ましい傾向。歓迎する。ただ、物書きとしての経験値、積み重ね築かれてきたプロのライターの営為・英知・ノウハウ、表現テクニックが散逸してしまうのはいかにも惜しい。勿体無い。