2ペンスの希望

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無風の害

本質は変わってないのに、風景は一変してしまった。
もはや新しい映画になんて誰も何も期待していない。隅っこの方で、物好きが、好き勝手にやってるだけ。誰に迷惑をかけるわけでもなし、邪魔にならないかぎり、放置・放任。そんなところか。自業自得と言えばそれまで。身から出たさび。ここ数十年、観客を育ててこなかった報い、作り手を育ててこなかったツケが回ってきたにすぎない。(邦高洋低、日本映画が元気だ、なんて噓には今どき誰も騙されない。)悩ましいのは、個人の責任と器量ではいかんともしがたいほどに金属疲労が進んでいることだ。

「時代の力量」という言葉がある。時代が個人の背中を押す、押し上げる、そんな追い風のこと。追い風だけじゃない。逆風に抗して、実力以上の思いがけない力が発揮されることもある。大事なのは、追い風であれ、逆風であれ「風が吹いている」ことだろう。いけないのは、無風状態・風が吹かないことだ。批評も実作も上映も「無風」、これでは若木は育たない。