2ペンスの希望

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建てつけ

映画は、おさまりの良いものより、少々建てつけの悪い位の方が面白い。
ラジオで或る監督さんがそう話しているのを聞いた。世界の中心で愛をさけんで人気を博した監督さんだ。「監督は納得が行くまで何度も撮り直し・テイクを重ねることで有名ですが‥?」というインタビュアーへの返答。
納得いかないから、何テイクも撮るわけじゃない。僕は納得してる。 スタッフも役者もそれぞれがそれなりに準備して現場にやってくる。セリフも入っているし、演技プランも練ってくる。プロなら当たり前。一応の及第点は取れる。それが最低限の合格ライン。
図面通りの仕上がり寸法。おさまりも十分にきれい。建築ならこれでOK、竣工検査でも何の文句もでない筈だ。むしろ余計なことをしてバランスを崩したり、おさまりが悪くなることを恐れる。けど、映画は建築とは違う。少し建てつけがガタピシしてるくらいが魅力的なことがある。だから、役者やスタッフが、あれ何か違うな、もう一回やりたいなぁと思っているのを感じたら、もう一遍、と声をかけるのが僕の役割。
」確かそんな話だった。同感する。だがプロがプロとしてあり続けているとは言い切れなくなってしまった昨今の現場の貧相を思うと、気が滅入る。