2ペンスの希望

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spontaneity 1

1895年リュミエール兄弟の『Le repas de bébé,(Baby's lunch)』

食事風景の背後には、たえず風に揺れる木の葉の様子が捉えられている。
パリでの上映会でメリエスはこのことに着目し強調したということだ。

spontaneity : 日本語には訳しにくい語だが、辞書を引くと、
[名詞] (pl. -ties)  1 自然発露的なこと,自然さ,のびのびしたところ;自発性;自然発生. 2 自然発生的な行為[動作],自発的行為[動作].3 外力によらない[自動性の]衝撃[運動,自然現象] 4. 植物が自生すること, などとある。
このspontaneity という言葉で、原初の映画の力を語った人がもう一人いた。
イギリスでドキュメンタリー映画の編集マンをしていたダイ・ヴォーン(Dai Vaughan)。彼は1981年「光(リュミエール)あれ(Let There Be Lumière )」を書いた。 昨日引いた長谷正人教授 『アンチ・スペクタクル 沸騰する映像文化の考古学(アルケオロジー)』第一章に全文が載っていた。面白かったので、邦訳(長谷先生)から引用する。
当時の人々が驚いたのは、‥‥動く写真という現象にではなく、映画が劇場では不可能な(従来の絵画や芝居では絶対出来ない)自生性(spontaneity )を描く能力を持っていたことなのだ。‥‥観客たちが驚いたのは、生命を持たないものまでが自己表現に参加していることだった。」(一部改変)
spontaneityについて、長谷センセは「人間の意図的なコントロールなど越えて、自然に画面に湧き出てしまったものという意味あい」と説明してくれている。
意図せざるものまで写し込んでしまう力の発現。低く見積もらない方が良さそうだ。