2ペンスの希望

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春のおススメ三冊

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このところ 読む本に当たりが続いている。どれも刺激的。各自で手に取ってもらうしかないが、備忘録的にちょこっと紹介。
小川さやかさんの本は、“Living for Today”をキイワードにアフリカタンザニアの零細行商人“マチンガ”、香港・深圳の“山寨”などをフィールドワークした本。
後がない切実・逼迫、必死ゆえの野放図、融通無碍、いい加減 が語られ示唆的。
世界はタフでラフ
総特集東村アキコ(ユリイカ臨時増刊号)は、少女マンガ家の解剖・成分分析 本。
アシスタントや弟子、担当編集の座談もあるが、ベストは当人インタビュー。
みんな自分で描いて自分で発表できる時代だと言うけど、だからこそ、別の人格が
いること、別の角度からの関与によって豊かさが生まれることをもっと知ってもらいたい

書体設計士を名乗る鳥海修さんの本。「昔からすでにあるのに、なにをいまさら
新しい明朝体やゴシック体を作る必要があるのか」との疑問に対する鳥海さんの答え。
一:明治の初めに入ってきた活版印刷の金属活字⇒オフセット印刷の時代の写真植字  ⇒DTP主流になってのアウトラインフォント技術変化に即して書体の有り様・出力方  式もまた変わらざるを得なかった。
映画だってそうだ。フィルムからビデオテープに、そして今はメモリーチップに変わった。仕事を始めた頃は、合成オプチカルは高価で厄介だった。光学処理、合成マスク、ハイコンポジ、リスフィルムなんてみんな死語だろう。ビデオ収録時代、字幕テロップカードを何十枚も写植で作っていたなんてのも昔話だ。
二:ひと昔前の印刷物はほとんどが縦組みだったが、最近はパソコン、スマホ、タブレッ  トなどの電子機器は例外なく横組みである。そのために横組みにしたときに読み    やすく美しい書体の要望が生まれる。解像度の限界もある。新聞活字も大きくなる   につれ、書体のデザインの最適化、微妙な対応が求められる。
縦書き縦組みから横書き横組みへ‥‥生活習慣の変化に伴うっモデルチェンジは映画にも当てはまりそうだ。縦長動画の登場にとどまらないOSレベルの改変可能性も大いにありうる話。
三:これまでは読みやすいということが最も重要だったが、最近では、今までにない
  個性的な書体もつくられるようになった。
   この三つ目は頼もしく期待大。
「水のような、空気のような」書体を目指す
という姿勢も好ましく清々しい。