2ペンスの希望

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監督のペルソナ

昨日の続き。
石渡均著『映画監督のペルソナ川島雄三論』から印象的だったフレーズを幾つか。
池内淳子‥実に細やかに、実に何事も深く‥本当に何気なく、何事も何気なく深く、広く‥‥
渋谷実彼は、オーソドックスが嫌で嫌でたまらぬ正統派だ。『幕末太陽傳』はほめられすぎであり、他の作品がみとめられなさすぎると思う。よくひとは『幕末太陽傳』を庶民の抵抗だとか、諷刺喜劇だなどというが、そんなものじゃない。彼の戯作趣味なんてとるにたらんことだ。笑いですよ。彼のやっていたのは喜劇ですよ。破滅型なんて言う人もいるがとんでもない。昔カタギの古風な人情家ですよ。
そういえば、その前に読んだ『監督川島雄三 松竹時代』に落語家 立川志らくは「喜劇を作ろうとしたら芸術映画になってしまった監督」なんて書いていた。お座敷が掛かれば、何でもやった筈だ。仕事なのだから。手を抜かず。それだけのことだったろう。「才能よりポリシー」を大切に、「省略とテンポ」を重んじ1944年から1963年まで、くだらない映画といい映画を51本作った職業人生。
最後は、(これも『松竹時代』本の中にあった)川島雄三の言葉。
ともあれ、理屈は言ふまい。」「見れば分かる。」
                (雑誌「新映画」1944年7月号 掲載「演出について」から)