2ペンスの希望

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不動の清冽

音楽にしろ演芸演劇にしろ、ライブ・ナマだ。目の前の演者に興奮する。思わず知らず乗せられて、拍手したり喝采を送る。その波動を受けて演者も呼応し思わぬ次元に到達することがある。観客次第でステージが動く。化ける。ライブだけの強さだ。

映画は違う。スクリーンと客席には、厳然たる「距離」がある。客の興奮によって映画が変わったり動いたりはしない。截然不動。べたつかない距離の揺るぎなさ。甘えも甘やかしもない。へつらいもおもねりもない。その清々しさを愛でる。映画館は、ひとりじゃないがひとりで見る世界だ。それでもごくごくたまにだが、観客席に波紋が広がり、静かな興奮に包まれているように感じる時がある。気のせいだろうが、ため息がもれたり、唸り声が聞こえる。そんな時は、エンドタイトルに向かって拍手したくなる。

そこで提案。もしそんな場面に出くわしたら、躊躇せず手を叩いてみてはどうだろうか。スタンディング・オベーションとまではいかずとも‥。

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