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NDU 布川 メモ リアル その①

NDU(日本ドキュメンタリストユニオン)の布川徹郎さんが遺したメモがある。

1990年代一緒にTV局を攻めようとしていた頃に、貰った。以来 大事にしてきた。

後進に向けてココに書き写しておきたい。

◎取材現場・備忘録(思いつくままに、マニアル ――― )

予めの想像していた対象から裏切られた場合は、それを追う。

無いものねだりは愚の骨頂。自らの認識・感性の貧困を点検の機会とすべし。

*未来よりも現在が豊かで大事、現在よりも過去が豊かで大事

*自らが帰属している日本の国家・社会より、その豊かな人間性・人間関係を描く

現場の成り行き、最優先。匿名・無名・無告の人たちからのメッセージを聞け。

*年寄りの思いを大切にする。しかし又、子供の在様も国家・社会を映し出す。

*民衆の年長者の、叶えられなかった夢を、原点として追って描いていく。

世界情勢一般から、現場を解きほぐさない。中心よりも、周辺が大事。

*日本の平均的な価値基準で、対象を見ない。

移動は出来るだけ、公共機関を使う。街を、人間関係を、彷徨い歩く

*あらかじめの想像力より、現実が豊か。正史よりも、裏面史の方が豊か。

*日本での幼年・少年時代の既視感にある、アジア・世界の原風景を追う。

*音楽・芸能・言葉・社会・宗教には、豊穣な歴史が横たわっているもの。

*あらかじめ持った、テーマ主義に陥らない。テーマよりも現実の方が豊か

*流動する、棄民・難民・底辺・被差別者の視点から世界・国家社会をみる。

*中世期、人間的なるもの、文化が最も開花した時代であることを忘れずに。

*取材対象者に対して、プラグマティズムな提示は、最低の報道姿勢・思想である。

ヤラセは、報道現場としての以前に、その人間性として、やってはいけないことだ。

*ホテル・宿は、最高から最低へ移り住み視線を低くしていく。

金持ちより貧乏人が豊か。写りたがりよりも拒絶する方が対象の、存在感がある

自分にないものを、この取材を機会に対象から発見し学ぶ

*この仕事・この取材を機会に、自らの人間性に磨きをかける。

*この仕事・この取材を機会に、自らの持っていた社会・世界観を翻えす。

(空)港に降り立った、10秒ぐらいに感じた直感を信じる

そして、生善説派として、対象・自分と向き合う

 

要は、状況・対象は、ビデオカメラを持った記録・報道者なんぞを超えている存在なのだ。

(註:太字強調は引用者 誤字脱字もありそうだが そのままにした。)

 

諸君 !!

どれもこれも示唆に富み胸に沁む文言だと思わないかぃ。撮影の現場を知る人間にはきっと役に立つ筈だ。