2ペンスの希望

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白鳥さんの本に寄せて①

刺激的な本と出合った。川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』【2020.9.8. 集英社インターナショナル 刊】目の見える川内さん(ノンフィクション作家)とその女友達マイティこと佐藤麻衣子さん(水戸美術館教育プログラムコーディネーター)全盲の白鳥健二さんと一緒に絵画や仏像などを見にいくルポルタージュ本だ。

晴朗女子二人組と全盲年長男性の凸凹アート遊歩。

同時進行で読み進めながら、気になった箇所をあれこれ書いてみる。

乞う御同行。(映画を見たり作ったりするときの何某かのヒントになると思うので。)

〇「見ること」の複雑さ

同じ絵を見ているのに、わたしたちはまるで違う絵をみているかのようだった。なぜここまで印象が異なるのか。‥‥ 徐々に「見ること」の複雑さが明らかになってきた。ものを見るうえで不可欠な役割を果たすのは事前にストックされた知識や経験、つまり脳内の情報である。わたしたちは、景色でもアートでもひとの顔でも、すべてを自身の経験や思い出をベースにして解析し、理解する。‥‥ 過去の経験や記憶といったデータベースを巧みに利用しながら、目の前の視覚情報を脳内で取捨選択し、補正し、理解している。

〇適度に無知であることはいいことである

バイアスなく、ただ無心に作品と向き合える。まるでガイドブックを持たないひとり旅みたいに。背景に精通し正しい知識やオフィシャルな解説を求めて一直線に正解にたどり着くのではつまらない。

さて、これは予断だが(㊟余談じゃないよ)

障害者は、おしなべて「触媒:Catalyst」か「加速器:Accelerator」なのかもしれない、この本の白鳥健二さんを見ているとそう思えてくる。自身は不変・不動なのだが、接する人達に化学変化をもたらし促す存在。