2ペンスの希望

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1986から

ひょんなことから山根貞男さんの『日本映画時評 1986−1989』【筑摩書房1990年6月刊】を手にした。1986年といえば、拙管理人は三十代後半、一番よく働いていた時期だ。横目で日本の劇映画を眺めながら、日々の仕事に追われていた。たまに見るのはヨーロッパ映画と商売柄PR映画や文化映画、ドキュメンタリーが中心だった。従って、この本で取り上げている日本映画は殆ど見ていない。
山根さんの評論は、個々の映画の出来不出来・良し悪しを語る時評スタイルをとりながら、撮影所システム亡き後の映画のあり方作り方を一貫して模索してきた。個別の映画評というより情況論だ。今読み返してみて、日本の映画を取り巻く情況と問題点が四半世紀前から全く変わっていないことに驚く。課題は出揃っていながらの25年間の停滞。皆一体何をしてきたのだろう。その場しのぎのその日暮らし。それが悪いとは誰もいえないが、事態はさらに末期的に進んだ。
しかし、嘆いてみたって何も解決しない。とするなら手探りででも前に進むしかない。
長い長いトンネルを抜ける道はあるのかないのか、あるなら何処に?
山根さんの本を手がかりに、少し日本の映画の「未来の形」を探ってみたい。