2ペンスの希望

映画言論活動中です

たまには上を

相変わらず、題材やモチーフで映画を語る評が多い。良心的なテーマ、見過ごしにしてきた社会的課題に果敢に切り込んだ意欲作、タブーに挑戦、‥云々。
しかし、だ。
主題がどうであれ、映画の出来が悪ければ、そのことに目をつぶるわけにはいかない。
青筋立ててイデオロギッシュに教条を振りかざすようなのは端から御免だが、
構成もへったくれもない、ただ日常を撮っただけの「生煮え」映像もご勘弁願いたい。
ステレオタイププロパガンダ映画を批判するのは勝手だが、長時間カメラを向けただけの「撮りっぱなし垂れ流し」映画を、「飾らない自然な姿勢に好感が持てる」「リアル・真実に肉薄している」と持ち上げる批評も如何なものだろうか。リアルなこと、自然なこと、素直で誠実であることだけで、「一翻(イーファン)」つけるのは、ここらでやめにしたい。
あまりにも出来の悪い映画が多すぎるからといって、少しでもマシな映画、普通に作られた映画をことさらに持ち上げることもなかろう。
瀕死状態が続く日本の映画状況にあって、目のある映画の芽を摘みたくない。ひとつでも美点があれば、何とか褒めようとする。応援したい、保護したい気持ちは分かる。
がしかし、だ。
これまでに、過保護から碌な結果が生まれたためしがあっただろうか。
映画の峰は遥かに高い。
下ばかり見ないで、たまには上を見てみたら‥そう思う 今日この頃 頻りに。