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本『僕の人生には事件が起きない』

図書館から借りて岩井勇気の本『僕の人生には事件が起きない』を読んだ。【2019.9.25. 新潮社 刊】

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TVによく出ている漫才コンビ〈ハライチ〉の「じゃない方」の芸人が「小説新潮」に連載していたものを纏めた本だ。正直 大した本じゃなかった。日常の益体もない話を綴っている。書き手はけっこう厄介で面倒臭い人だった。(誤解されては困るが、ディスってるんじゃない。それなりに買っている。ご本人も十分自覚的。)「はじめに」と「おわりに」が読ませる。(本文より面白いというのも何だかなんだけど‥つまりはそういう本なのだ。そこだけ立ち読みすればこの本のトーン&マナーが分かる。機会があれば、どうぞ。)「おわりに」から少々挙げてみる。

芸能の世界で仕事をするようになってからずっと思っていた。僕の人生には事件が起きない。が、それと同じように皆さんの人生にもそんなに事件は起きていない。そして、テレビで見る芸能人の人生にもどうせ事件など起きていないだろうと。それを皆、化学調味料で元の味などわからなくなるくらい嘘のように濃い味付けにして提供してくるのだ。そんなものばかり食べていると、そのうち舌が馬鹿になる。物の味なんてわからなきなってしまう。

僕はこの本を書いてみて思った。文章は待ってくれるし、すぐに結果を求められない。読み手に丸呑みされず、しっかり咀嚼してくれるので繊細な味付けも楽しんでもらえるようだ。‥(中略)‥  濃い味付けのものは美味いけど、そうじゃないものの方がずっと長く食べていられるらしい。

誰の人生にも事件は起きない。でも決して楽しめない訳ではない。平坦な道に見えても地面に頬を擦り付けてよく見てみると、いびつにぐにゃんぐにゃん曲がっていたりする。どんな日常でも楽しめる角度が確実にあるんじゃないかと思っている。‥(中略)‥ ここから見たら結構面白そうだな、という角度を見つけて皆さんに見てもらえたらと思う。

発売半年で9刷、二年で累計10万部突破とあるのでヒットしたようだ。2021年9月には第二弾『どうやら僕の日常生活は間違っている』が出た。ケチなので買わずに最寄りの公立図書館に予約した。41人待ちだった。