③は 小津安二郎 1903(M36)年12月 生。1957年の映画『東京暮色』(1957 松竹大船)
わたしは、小津の戦後作品のなかで、『東京暮色』が一番好きだが、一九五七年の公開時は、非常に評判が悪く、失敗作と言われた。
『東京暮色』は、たんなる家族の崩壊に伴う悲劇ではなく、人間相互間の非情なまでのディスコミュニケーションを描いた作品である。
小津は、『麦秋』や『東京物語』で、戦後社会における、ほとんど必然的ともいえる家族の崩壊を描いたが、『東京暮色』は、そのレベルを遥かに超えて、人は家族であろうとなかろうと、孤独を抱えた独りとして生きるしかないという世界を提示したのである。それは、彼の戦後社会に対する批評であろう。そして、その作品としての強度に、当時の批評は耐えられなかったのだ。
ポスターはどれもカラフルだが、映画は前作『早春』(1956 松竹大船)とともに白黒・スタンダードサイズ。
何を隠そう この二本、戦後の小津映画の中では、管理人も好きな二本。