2ペンスの希望

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小津ごのみ:一貫モダニスト

女たちのきものと帯の柄は徹底的と言っていいくらいグラフィックデザイン的だ。絵画的ではなくデザイン的。作り手の個性などまったくない。無名の人々が歴史の中で作りあげて来た幾何学的な柄だ。たとえ花鳥風月が題材になっても、絵画的なタッチではなく、単純化、デザイン化されたものに限られている。個性や抒情性はきびしく排除されている(一部割愛して引用。太字強調は引用者。)

1952『お茶漬けの味』ここにも ひょうたん柄(!) 

こちらは、1953『東京物語』不自然なほどの反リアリズム

中野翠が描いた「本文カット」から勝手に引用

原節子(28歳 未亡人)、香川京子(23歳 独身)、三宅邦子(39歳 主婦)の三人が揃いも揃って白ブラウス+無地スカートなのだ。襟の形などディテールで人物像の違いはわずかに出しているけれど、ほとんど制服。服装からできるだけ個性や表情や主張を追放しようとする。小津監督の生理はそういうふうに動くのだ。(一部割愛構成順序変更。太字強調は引用者。)

戦前戦後一貫して趣味性全開のモダニスト(それも個性を抑えたハイカラモダン)だった!‥これが中野翠の見立て。