2ペンスの希望

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美意識過剰

三島由紀夫は映画が好きだった。
潮騒』『炎上』をはじめ原作提供は、生前に限っても『剣』『獣の戯れ』『愛の渇き』『美徳のよろめき』『お嬢さん』『複雑な彼』『純白の夜』『夏子の冒険』『永すぎた春』『にっぽん製』『不道徳教育講座』『肉体の学校』『燈台』さらに戯曲『黒蜥蜴』まで多彩だ。
『からっ風野郎』や『人斬り』などでは主演俳優を務め、挙句は自身の製作・脚本・監督・美術・主演で『憂國or The Rite of Love and Death』(1966年公開 28分)を作った。公開当時に見ているが、正直、美意識過剰で苦手 感心しなかった。
(いまみたらどうだろうか?)
映画評も含め、求められるままに映画についての文章もたくさん書いている。女優では若尾文子ら、男優では鶴田浩二などがお気に入りだった。【山内由紀人編『三島由紀夫 映画論集成』(1999 ワイズ出版)山内由紀人著『三島由紀夫、左手に映画』(2012 河出書房新社)】今回あらためて読み直してみて思った。
美意識過剰だが、映画の目利きはなかなかのものだ。 ひとつだけ引く。
雑誌「映画芸術」1968年新年号での大島渚との対談記事「ファシストか革命家か」。
司会(小川徹編集長)の「黒澤明はどうですか」という質問に、言下に答える。
テクニシャンですよ。すばらしいテクニシャンですよ。 思想はない。思想はまあ中学生くらいですね。
存命中の黒澤明がどう聞いたかは知らない。けど、黒澤映画の本質を射抜き最大級の評価を下しているように読める。 映画にとってテクニックが第一、思想は二の次、そういっているみたいだ。 賛成!
ということで(何が「ということで」なのかサッパリ分からないが)今日は、三島が歌う映画『からっ風野郎』(1960年大映東京製作)の主題歌。作詞・歌 三島由紀夫 作曲・ギター演奏 深沢七郎。もっとも映画では使われなかったそうだが。
昭和のにおい芬芬(ふんぷん)。