2ペンスの希望

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太田和彦『映画、幸福への招待』

太田和彦さんの『映画、幸福への招待』【2023.2.10. 晶文社】を読んだ。

居酒屋探訪でつとに有名だが、無類の映画好きだとは初めて知った(面目ない)。管理人より2年先輩、映画体験はどっぷり重なる。懐かしい名前が続々ゴロゴロ出てくる。

帯には、「名作60本」とあるが、評価の定まった名作・古典は差し置いて、往時の日本映画 プログラムピクチャー=量産娯楽映画をとめどなく語って愉しい。「中身なんかいらん。テクニックで面白がるのが映画」「反戦も日本もくそくらえ」「精神性ゼロ、面白ければいい」と、ひたすら旧作に光を当て続ける。1994年上梓の『シネマ大吟醸 魅惑のニッポン古典映画たち角川書店 のち 小学館文庫】に続く二冊目の映画本。

日本映画に特有の表現とは何か」を問い、「劇性よりも情感を重んじ、人物を風景に溶け込ませ、日本画における余白の部分を大切にする」と書き、「撮影所育ち監督の練達の技」「古い時代が写っている」「今の俳優には望めない、男らしさ、女らしさを持ったスターたち」とその魅力を語る。

元手をかけ、年季が入った言葉群に脱帽 最敬礼。