2ペンスの希望

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実相寺の『風』

是枝裕和『映画を撮りながら考えたこと』【ミシマ社 2016年6月 刊】、樋口尚文実相寺昭雄 才気の伽藍』【アルファベータブックス 2016年12月 刊】を立て続けに読んだ。ともにテレビディレクターから映画監督になったという共通点がある。もっとも1962年生まれの是枝が「テレビと映画の語るに足る歴史というものがすでに終わったあとに、ものをつくり始めているという自覚」から語り始めるのに比べ、1937年生まれの実相寺は(正確には樋口尚文の言葉なのだが)「「心ならずも」テレビ局で映画的なるものを志向してきた」と繰り返すのは感心しなかった。
お二人の映画はそれなりに見てきた。が、手の内が透けてみえる“あざとさ”や“思わせぶり”が鼻につくこともあり、どちらかといえば苦手だ。
それでも本で初めて知ることもあった。
東京処払い中(?)の京都で、実相寺が1967年秋から1968にかけてTBS・松竹制作 栗塚旭主演の時代劇シリーズ『風』を4話演出していることはこの本で知った。水曜日午後8時フジテレビ 大川橋蔵主演『銭形平次』の裏番組 真っ向勝負だった。結構な視聴率を稼いで健闘した筈だ。リアルタイムで観ていたことをゆくりなくも思い出した。
実相寺は川崎高というペンネームで主題歌も作詞している。

もしかしたらネガポジ反転のタイトルバックも 実相寺のアイディアだったのかも。