2ペンスの希望

映画言論活動中です

2015-01-01から1年間の記事一覧

『独立愚連隊』

今日は久し振りに予告編。大阪の高校時代浴びるように映画を見ていた頃に好きになった岡本喜八監督。家から徒歩十分にあった「南田辺東宝」で全部見た。 1959 独立愚連隊。 佐藤允と雪村いづみは憶えていたが、鶴田浩二や三船敏郎が出ていたことはすっかり忘…

贅沢な時代

春日太一さんが役者・仲代達矢にインタビューした本を読んだ。 「仲代達矢が語る日本映画黄金時代」【PHP選書843 2013年2月 刊】 映画デビューは黒澤明『七人の侍』だったと語っている。といっても僅か2秒ちらりと写るだけの「その他大勢」端役以下。…

郄田郁さんのファンだ。宝塚市在住の時代小説を中心に書く作家。 デビュー作から欠かさず読んできた。恐らく時代考証の専門家からみれば、言葉遣いも所作も作法も出鱈目が目につくのだろうが、なあに構やしない、2015年に作られた時代小説なのだから人生観や…

新しい天体Ⅱ

昨日書いた開高本『新しい天体』にこんな文章がある。 「批評の出発点で終点でもあるのは直感の第一撃なのであって、それからあとの言葉は御世辞か自己宣伝かである。」料理は自分の舌で味わえ。人の評判や格付け評価を信用するな。自らの直感を第一とせよ、…

新しい天体

作家・開高健に『新しい天体』という本がある。食の現場の食べ歩きルポルタージュだ。タイトルは、ブリア=サヴァランの『美味礼讃(味覚の生理学)』にちなんだ命名である。 美食家サヴァランはこう書いた。 「新しい御馳走の発見は人類の幸福にとって天体の…

整理整頓無し

五十年近く、下ごしらえ・整理整頓無しにやってきた。過去の経験をキレイに整理整頓して抽斗に収納する知恵も工夫もない。今更改める器量もない。従って机の中は雑多なガラクタが乱雑に放り込まれているだけだ。 その日ぐらし、その場しのぎ、徒手空拳の丸腰…

丸腰こそ

友人に勧められて、久し振りに映画を観て来た。 今や貴重・稀少 入替えなしの二本立て館。平日の午後。お客さんは結構入っていた。135席の4割前後が埋まっている。映画は、弱冠28歳新人監督のデビュー作。米アカデミー賞で三つもオスカーを獲っている。けど…

There are no shortcuts.

今日は2014年にマーティン・スコセッシが愛娘に送った公開手紙を挙げる。Martin Scorsese A Letter to my DaughterDearest Francesca,I’m writing this letter to you about the future. I’m looking at it through the lens of my world. Through the lens …

前を向く人

映画も文学もたそがれてしまった。誰もが感じているところだろう。 昔は良かった、昔は凄かった、‥うしろを振り返って溜息ばかりついている。そんなことしても何も始まらない。なのに自慢話・昔話にふける業界人は掃いて捨てるほど多い。俺たちの頃は‥、昔々…

定型紋切型

映画の惹句なんて、売らんかなの嘘八百‥そんなことは百も承知だ。 「全米が泣いた」なんてイマドキシャレにもネタにもならない。誰も騙されない。 ヨソモノの惹句ならそれでも良い。安物・安手のご愛嬌とスルーすれば済む。 けど、我が国の映画となると笑って…

明るい闇

老舗大手メジャーと云われてきた日本の映画会社(さしずめイメージするのはTとTとSの三社)は、既に何十年も前に死んでいる・ゾンビだと思う。 ゾンビが云いすぎなら、「抜け殻」或いは相撲で言う「死に体」。彼らが最早映画製作会社じゃないことは御自身が…

◎〇△×

このところ更新が滞っている。 単なる息切れ・サボってるだけなのだが、思い当たる節がひとつだけ。以前から映画を見たらひそかに◎○△×の四段階で評価メモを付けてきた。 ◎:見てとても良かった 見た方が良い 〇:見て良かった 見ても良い △:見ても見なくて…

『死者よ来たりて‥

今日は、宣伝というか告知。 東京の先輩から、1969年グループびじょん制作の記録映画『死者よ来たりて我が退路を断て』(65分)をネット【YouTube】で全編公開したという連絡を貰った。 当時短編記録映画やPR映画を作っていた日本映画新社の演出部や撮影部の…

「なんや、こっすいねん。」

淘汰と選別は市場に委ねるべし、介入不要、そんな反論を受けた。 世の中盲千人目明き千人、確かにそのとおりだろう。 映画が作りやすくなったことは悪いことではない。要らぬ辛抱・堪忍をする必要はない。行く手を阻むハードルは低いに越したことはない。障…

淘汰と選別の目(芽)

最早、映画館で映画を観るという形は、「映画の流通」「事業としての映画」にとって、隅っこの一部分でしかなくなってしまったのだろう。 自前で精力的に新作を作り続けている監督さんとそんな話になった。 劇場公開、ホール上映、TV放映、パッケージ販売、ネ…

「過去を‥」

今日も印象に残った言葉を、備忘録とする。 真山仁の書き下ろし小説『雨に泣いてる』【幻冬舎2015年1月 刊】全体はいまひとつ(ふたつ)だったが‥、この台詞には惹かれた。 「過去を知らないと、人となりが分からないようじゃ、まだまだ青いな」 来歴や所業…

梅ちゃん

平井玄さんの「ミッキーマウスのプロレタリア宣言」を読んだ。【太田出版 2005年11月 刊】平井さんは1952年生まれ・映画『山谷やられたらやりかえせ』の製作スタッフだ。本に、山谷の労働者「梅ちゃん」のエピソードが出て来る。備忘録的に残して置く。 「「梅…

WHO WAS THAT MAN!?

今夏も何人もの映画人が逝った。沖島勲さん。享年74歳。7月5日永眠。テレビアニメ「まんが日本昔ばなし」の脚本家として知られる。全1470話のうち1230本を手掛けた。これが世を忍ぶ仮の姿だったかどうかは知らない。けどその昔、生意気盛りの映画青年にとっ…

風景映画

むかしむかし あるところに「風景映画」というのがあった。 『略称:連続射殺魔』 86分の映画。 音楽演奏:富樫雅彦(ドラム) 高木元輝(サックス) 冒頭と末尾に、白地に黒く「 去年の秋 四つの都市で同じ拳銃を使った四つの殺人事件があった 今年の春 一…

「撮らないとつぎはないぞ」

鈴木了二さんの本『建築映画 マテリアルサスペンス』を読み了えた。 頭が切れて、弁が立ち、かつスタイリッシュな建築家の手になる本ゆえどの程度に理解出来ているのか覚束ない。最後の黒沢清監督との対談が面白かった。 以下すべて黒沢発言。 「建築もそう…

ロカルノ受賞

演技経験の無かった女性4人がロカルノ映画祭で「最優秀女優賞」を獲ったというニュースを聞いた。きっとすぐさま大騒ぎになって、そのうちすっと忘れ去られるのだろうな。 映画は濱口竜介さんの『ハッピーアワー』(元は『BRIDES.(仮)』)。クラウドファンデ…

ラストシーン

ちょっとした趣向で、昨日8月15日木下恵介の『二十四の瞳』を観た。 数年前に見直して木下組の上手さに脱帽したことは、以前一度書いたことがある。(http://d.hatena.ne.jp/kobe-yama/20130201「まっちゃん」) 何度も観ているのに、最後の場面は忘れて…

「建築映画」

鈴木了二さんは「建築映画」という概念を挙げる。 「ともかく、物語にも意味にも関係なく映画に建築が映っていると少しでも思ったら即座にそれを建設映画とみなす。それだけだ。とはいえ、建物や家屋を撮っているだけではまだ建築とは言えない。 それだけでは…

当たり前のこと

渡辺武信さんの例を俟つまでもなく、建築家で映画評論を手掛ける人物は昔から沢山居た。昨日から、鈴木了二さんという建築家の本「建築映画 マテリアル・サスペンス」【LIXIL出版 2013年1月 刊】を読み始めている。 冒頭に置かれた「ジョン・カサヴェテス論」…

「理で詰める」

記録映画を二本観てきた。 2012年に完成していたが見逃していた一本。評点は△(観ても観なくてもいい。悪くはないのだけれど、感心はしなかった。) もう一本は出来立てのほやほや。評点は×(観ない方が良かった。) 映画というのは、本当に難しい。 そう思…

道徳、法、根拠、理性、意味

昨日に続いて、佐々木中「仝[dou]」から。 「多くの人が、ある種の思考の罠に陥っているように私には思える。‥カオス、非道徳、無根拠、非因果性、無法、無意味、ナンセンスこそが素晴らしく、ラディカルで、しかも「面白い」という思考の罠、です。」 「どう…

「誠実な絶句」「沈黙の気泡」

暫く映画は見ていない。 歯ごたえのあるものと甘味の強い軽い本を読んで暑気中りを凌いでいる。 甘味系では、いとうみくの「かあちゃん取扱説明書」【童心社 2013年5月 刊】が、 歯ごたえ系では、佐々木中の講演集「仝[dou] selected lectures 2009-2014 」…

「映像よろず相談員」

組織を離れフリーになってから、名刺には「映像/企画 構成」と刷り込んで使ってきた。たまに分かりにくいといわれる。要は、「監督」とか「プロデューサー」とか「映像作家」とか名乗りたくないという我がままだ。お座敷がかかり、話を聞き、出来ることなら…

喋っていいシート パーティールーム

映画は一人で見る?誰かと一緒に見る? このやりとりは昔からあった。 誰かと行くと気を遣ったりストレスが溜まるので断然単独行という人もいれば、 見た後のおしゃべりが楽しみなので一人では出掛けたことがないという人もいる。 えっ、管理人はどちら派か…

背反有理 15夏

背反有理 2015夏のコレクション。 ■ 「弱さの強さ」 「強さの弱さ」 by 辻信一 (明治学院大学国際学部2010―2013「弱さの研究」 中間報告書) 以下↓は 辻信一が師と仰いでいた鶴見俊輔さんの言葉。 「子どもは大人の親である」 「To loss to gain 失うことこそ…