2ペンスの希望

映画言論活動中です

2013-01-01から1年間の記事一覧

三吉語録「思案はタケノコ‥」

阪田三吉の言葉としては、「銀が泣いている」が有名だが、ラジオでこんなのを知った。 「思案はタケノコみたいなもので、大部分は土の中に埋もれている」 深く作り深く読め、ということだろうか。表層の向こうに拠って来たる厖大を想像せよ、というところか。 映…

紙幣三題(零円札・偽造法幣・贋札)

もう大昔のことだが、赤瀬川原平さんの零円札を購入したことがある。たしか五百円だったと思う。送金したら暫くして「大日本零円札発行所」のゴム印葉書が送られてきた。「いま立て込んでいて鋭意制作中なので暫し時間を」という文面だったと記憶する。その…

題名2

正直な話 長い職業人生活の中ではやっつけ仕事もこなしてきた。 毎年何十本も採用活動支援ビデオ(世に言うリクルーティングビデオ)を作っていた時期があった。その頃のタイトルには「未来への架け橋」「明日を夢見て」なんて、通りいっぺんのネーミングでお…

筑前おしぼり人形

テレビ番組「探偵!ナイトスクープ」(制作ABC)のファンだ。 東京で単身赴任生活をしていた頃からだからかれこれ25年になる。(今はどうだか知らないが当時は首都圏では金曜の深夜枠ではなく日曜昼の放送。業界用語でいう所のいわゆるアパッチ=曜日・…

『3:10toYUMA』

録画したまま溜まっていたBS・OAの洋画を立て続けに観た。BB主演作、Aドロン主演作、Sマックイーン初め豪華俳優陣の共演作、そして、コレ。『3時10分 決断のとき』【原題は 3:10toYUMA 1957年米】 コレのみ初見だったが、抜群に良…

『不合理ゆえに〜』

思うところあって埴谷雄高『不合理ゆえに吾信ず』【1961年6月刊行の現代思潮社版】を読み直した。 埴谷雄高さんがこれを書いたのは、昭和十年代(発表したのは1939年) 管理人が夢中になって読んだのが、昭和四十年代(1969年から70年にかけて…

豊かになることで失っていくものがある

数日前 ある寄り合いがあった。 そこで同年輩の銀行マンOB・Mさんからこんな話を伺った。 働き盛りの40代、インドネシアでの海外赴任時代の出来事。 当時はメーカーや商社・JICAなどの海外駐在員は皆、限られた高級住宅地に居住し、現地の人々が暮…

場があること、空間があること、形があること、容れ物があること、 「容器」の重要性に改めて気付かされる。 舞台があること・舞台装置の必要性と言いかえてもよい。 たとえその中身がいかにたどたどしく、幼くあっても「場=容器」そのものまで否定してはいけ…

分かり易い‥

分かり易い映画が多すぎる。 濃い味付け、添加物・保存料たっぷりのジャンクフード、噛まなくても呑み込める流動食、幼児向けウエハース、そんなのばっかりが目立つ。黒ブチメガネに白ブラウス、タイトスカートの女教師、サングラスに派手な色柄シャツを着込…

作家とデザイナー

若い人とのミーティングで、作家とデザイナーという話になった。 彼はこう言った。 「作家というのは自分の作りたいものを作る人、妥協しないし、出来ないし、またする必要もない。極論するなら、作ればOK。観客は不要。評価も毀誉褒貶も埒外。 対して、 …

落合映画本

都心の本屋で落合博満さんの映画本『戦士の休息』を見た。 スタジオ・ジブリ発行の冊子「熱風」の連載記事をまとめたものだった。パラパラ読んでみた。好みはもちろん違うが、至極まっとうな映画ファンであることは良く伝わってきた。1953年秋田の生まれだ…

映画の食べ方

山田宏一さんの新刊本『映画 果てしなきベスト・テン』【2013年5月草思社刊】を読んだ。無類の映画好き(今様淀長さん!)ベストテンなどそもそも無理な話、噴飯モノであることを十分承知した上で、それでも語りたくて語りたくて堪らない映画の魅力、し…

照明

昔と変わったものは沢山ある。 キャメラのデジタル化もそのひつつだが、今日は照明の話。 仕事を始めた45年前には、フィルムの感度が低かったために、室内撮影には照明技術が欠かせなかった。大きな工場撮影には、百キロワット以上のライトを使う。大体十…

視覚と聴覚(菊地さん再録)

ここ暫く、菊地成孔さんの映画本『ユングのサウンドトラック』を賞玩している。 映画評論家として高名なH先生との対談【初出は「エスクァイア日本版」2008年2月号】で、音楽家らしい発言をしている。 「キャメラとマイクは今や同じ機材として完全に一体…

事情は同様?

事情はどの世界も同じようなものらしい。 昨日の続き。山田孝雄は同じ『私の語誌』第2巻の末尾で、国語辞典編纂の現状についてこう批判している。【265〜266頁 1996年9月三省堂刊】 「この国の辞書事情は、こんな調子では何時までも、退歩と停滞…

「私のこだわり」

「こだわり」は褒め言葉ではなく「どうでもいいような些細なことにこだわる・拘泥する」良くない言葉だ、よって、「こだわり」という言葉はそのようにしか使わない――― 二十年余りそう「こだわって」やってきた。しかし、それが大間違いだったことをつい最近…

イマドキ格言もどき

何年も前から2チャンネル辺りで新しい処世訓・格言・箴言のようなものも生まれている。そう若い人から教えてもらった。今日は、目に付いたものを幾つか挙げてみる。◎プラスはマイナスから書き始める ◎最大の敵は自分 最大の味方は自分 ◎不純な気持ちが10…

「ゆっくり負ける」

吉野万里子さんという方の『チームひとり』という小説を読んだ。 ジュブナイル=ヤングアダルト(発達心理学で言う所の成人期前期12〜19歳若い大人)向けのライト・ノベル。スポーツもの=小学生卓球選手の成長物語。ラスト近く、コーチが主人公の卓球少年…

新陳代謝

言葉は時代を映す鏡だとはよく言われる。 生まれ育った時代を背負って現われる。拙の場合‥‥イケメンよりハンサム、生足より素足、目線ではなく視線‥‥、つくづくオールド、正真正銘時代遅れの守旧派だ。 しかし、昔を知らなさ過ぎる、言葉遣いが間違っている…

和洋二本立て

かなり惨(むご)い二本立てを観た。 場所は神戸の映画館・イマドキ貴重な二本立て二番館。(名画座と呼ぶべきかもしれないが、ここはエールも込めて二番館と言っておきたい) 二本立ての場合、大半は洋画なら洋画で二本、邦画なら邦画のみで編成される。 し…

『横尾忠則全装幀集』

横尾忠則全装幀集という本が届いた。(全550ページ、総重量1650グラム)55年あまりのあいだに彼が手掛けた本の装幀900点を網羅した本だ。惹句にはこうあった。「装幀という名の自伝」。すべてに当人のコメントが付されている。 写真は1970年…

映画『旅する映写機』

東京の知人が、『旅する映写機』という映画を作っている。 やっと完成し、ただ今公開準備中とのことだ。 公式ウエブ・サイトがある。そこで予告編を上映中だ。 時間のあるときにでも、是非覗いてみて欲しい。 http://www.eishaki.com/index.do?cmd=display

『日活館』

年来『居眠り通信』というメールマガジンを愛読してきた。編集発行人は、斯界の大先輩にして今も現役のテレビマンMさん。すぐ隣の駅に住まいながら永らくのご無沙汰だが、今日はご当人の許諾を得てそのメルマガ最新号を転載させて戴く。 日本全国何処にでも…

好き嫌い

映画の好き嫌いが激しい方だ。 スリラーは好きだが、オカルトは嫌い。幽霊モノはOKだが心霊モノはNG、ネイチャー映画は苦手、動物モノも駄目、アニメも殆ど見ない。こうして挙げていくとかなり偏食なのがバレる。改めて胃袋の小ささに驚く。しかし、この…

マイナス・アーカイヴ

昨日の菊地成孔さんの挑発に乗ってみる。 確かに、百年以上の歴史を重ねてくると、映画にも古典・名作アーカイブが形成される。誰もが観ていて当たり前、基礎教養としての必修アイテム。しかし、そんなこと誰が決めた。そんなの関係ない、と言う若者もまた登…

菊地さん

JAZZ関係者あたりから、ときにとてつもなく刺激的な映画批評の矢が飛んでくることがある。全盛期の山下洋輔さんしかり、ゼロ年代の菊地成孔さんしかり。 そんな予感とともに『ユングのサウンドトラック』(副題:菊地成孔の映画と映画音楽の本)【2010…

拍手雲泥

映画館で監督や出演者を招いて舞台挨拶やトークショーを行うのが当たり前のようになって久しい。そんな映画館では、上映後拍手が起こることが多い。映画に感心して起こるのなら慶賀の至りだが、映画関係者が居ることを意識しての拍手、映画の出来不出来とは…

ホームシアター

ホームシアターの充実が進んでいるようだ。 大型量販店のAVコーナーに行くと、小型高性能のプロジェクター、スクリーン、サラウンドスピーカーシステム、遮光暗幕までラインナップが揃っている。数十年前、オーディオルームというのが流行ったことがあった…

芸の有無

学者・研究者先生は本当にスゴイ。皮肉ではなくそう思う。 映画について、「意味に収まりきらない過剰な何か」という十五文字を語りきるために、何年もかけて文献をあさり、二百五十頁を超える学術書を出版する。そのエネルギーには感心する。しかし、用語の…

少年漫画

少年漫画については永らくご無沙汰だった。先日久方ぶりに手に取って驚いた。 進歩なのか退歩なのかは正直よく分からんが、昔に比べて感情や意識の表現がどんどん細かく深くなっている。そう感じた。ディテールへのこだわり、トリビアルへの言及がハンパない…