2022-01-01から1年間の記事一覧
パソコンで原稿を入力して、メールで送って入稿するようになって、手書きの自筆原稿は消滅した。 かつての手書き原稿の稀少性・高額売買人気は過去の遺物になってしまった。 技術の進歩が何かを消し去ってしまうことにもう少し注意深くなってもいいんじゃな…
『坊ちゃんの時代』からもうひとつ。「第三部 かの蒼空に」 主人公は啄木石川一。強心臓の浪費癖。前借・寸借の常習犯。女郎買いを生理的無駄遣いと日記に書く。自分の性格の底にひそむ逃避癖と放埓さ(の必然)を自覚した近代人。夭折の天才歌人像をくつが…
『「坊ちゃん」の時代』を全巻 読んだ。1987年から1996年まで双葉社刊行の雑誌『漫画アクション』に連載された大河漫画だ。「凛冽たり近代なお生彩あり明治人」の冠詞を持つ。 漱石夏目金之助を中心に明治の文学者たち政治家たちが登場し、時代や世相を描く…
❝ムービー・ルネッサンス❞ こなれの悪い折衷外国語でゴメン。なに、古典に還れ、という運動、そのスローガン=キャッチフレーズのつもりだ。もとより誰かが言ってるわけじゃない。誰も知らない言葉だ。昔々〝ヌーヴェル・ヴァーグ〟という言葉が一世風靡し、…
少し前だが、鳥取・湯梨浜町の映画館 jig theater に行って佐々木友輔監督の映『コールヒストリー』【2019 89分 】を観て来た。 jig theaterについても、佐々木友輔さんについても何度か書いてきた。 jig theater のことはコチラで⇒ jig theater - 2ペンスの…
昨日からの続き。カイエ・デュ・シネマ編集部編『作家主義[新装改訂版]』 セルジュ・ダネーは序文の「結局」にこう書いている。 1950年代半ば、「作家主義」に対しては、三通りの「否(ノン)」が突き付けられた。 ひとつめのタイプは、 一本の映画とはさまざ…
アンリ・ラングロアやアンドレ・バザンについては夙に有名だろう。セルジュ・ダネーの名は、今回『作家主義[新装改訂版]』【2022.4.15 フィルムアート社 刊】で初めて知った。 巻頭、「結局」と題された序文が出色だった。 ヌーヴェル・ヴァーグの映画作家た…
映画ファンなら誰にだって、十代から二十代前半に観た忘れられない一本がある。 拙管理人に 1952レナート・カステラ―二監督『Due Soldi Di Speranza(2ペンスの希望)』があったように、蓮實重彦大先生にとっては 1957ドン・シーゲル監督『BABYFACE NELSON(…
ほぼ一年ぶり。背反有理 新ネタ 補充。 日本人は契約しないという契約をしている 上田 誠(1952~万葉学者『協会と千歳飴』89P 2021年4月7日 小学館 刊) 「昔、校長に聞いたんやけどな。先生に向いている人の条件ってのがあるんやって。なんやと思う?」 「…
大学で映像論やコミュニケーション論を教えている知人が何人かいるのだが、話を聞くたびに驚かされる。 少し前 或る先生から聞いた話: 「今の大学生は感情を揺さぶられたくない。あまり激しいものには出会いたくない。避ける傾向が強い。例えば、大学で参考…
備忘録。 長じて落語にハマった中野翠さんの新書『今夜も落語で眠りたい』【2006.2.20. 文藝春秋 刊】にこんなくだりがある。(余談だがこの題名 ポーリン・ケイル女史にちなんだ命名だとあとがきにある。映画好きにはたまらない。嬉しいことだ。) 「親密に…
大阪の天満天神繁昌亭に行ってきた。 昼席のトリは、桂塩鯛さん。まくらは、小咄の三層構造の話だった。こんな話だ。 一層目は、誰が聞いても分かる分かり易いもの。 「鳩がなんか落としていきよった」 「ふ~ん」 二層目は、ちょっと考えるやつ。 「お隣の…
久しぶりに今日は予告編。 1965年 北アイルランド生まれのマーク・カズンズ監督の映画『 The Story of Film A New Generation 』by Mark Cousins (公開中の邦題は『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』←なんとまぁ腰の引けたサブタイトルだろう)神…
「野球とサッカーと本と映画と、そんなようなものに関する雑文集」とある〈念仏の鉄〉さんのブログ『見物人の論理』 どこのどなたなのか、なりわいもなにも存じ上げない。が、一読感心・得心出色の映画評だと感じ入った。おススメ。(映画とその周辺でメシを…
中野翠さんのエッセイにこんな言葉を見つけた。 「つまり、「箸のあげおろし」一つ取っても「教養」というものなのだ。その人が何を恥ずかしいと感じ、何を美しいと思い、何をたいせつと考えるか。そういうことの総体が「教養」なのだ」(「ある教養の死」文…
「音楽にしろ映画にしろこれからは新作以上に、これまで作られた中で残っていく作品、つまり「古典」の生き残りが、激しくなってくると思います。ビートルズを聞かないでミュージシャンになる人がいて、それが受け入れられる時代の風潮があるようにぼくは思…
あまり褒められた趣味ではないが、他人様の本棚の写真を見かけるとルーペを取り出してどんな本が並んでいるのかをつぶさに見てしまう癖がある。一時、「本棚拝見」本がブームになったことがあるが、あの人がどんな本を読んでいたのか、下品な覗き見趣味が抜…
「デビュー作にはその後のすべてが詰まっている」という言葉を必ずしも信じているわけではない。けど、森田芳光監督映画は世評に高い『家族ゲーム』より『の・ようなもの』のほうが断然好きだ。 没後、パートナーだった三沢和子と宇多丸が編んだ『森田芳光全…
映画本はやっぱり現場の人にインタビューした本が一番だ。村川英編著『新版成瀬巳喜男演出術 役者が語る演技の現場』【2022.3.24. ワイズ出版】を読んで改めてそう思った。 これにくらべたら有象無象の評論家・研究者の論考なんてどんなに精緻だろうと生彩に…
石井隆さんの訃報が届いた。 そうあの「土屋名美」と「村木哲郎」の生みの親だ。といっても若い人にはちんぷんかんぷんだろうが。(気になったら適当にググってくれ。訃報はどれも映画監督の、となっているようだが、管理人にとっては 終生変わらず一級の「…
今日は久方ぶりに唄。全くウエットでノスタルジックな懐古趣味 全開でいく。 美空ひばりは別格にして、昭和で好みの女性シンガーが三人いた。北原ミレイとちあきなおみともう一人、青江三奈。彼女がNYで録音したレコード音源から。 www.youtube.com BOURBON …
最果タヒの本『神様の友達の友達の友達はぼく』からもうひとつ。 「詩的な言葉と、詩そのものって、全く違うと思う。(詩的な言葉って)人それぞれが過去に見つけた「詩性」に訴えかけたりするんだろう。‥(略)‥「夕焼け」「海」「光」「くれよん」とか、‥…
表題は、最果タヒのエッセイ集『神様の友達の友達の友達はぼく』【2021.11.30 筑摩書房 刊】にある一節だ。(最果さんのことは調べてみて。当管理人は、谷川俊太郎に次いで詩人専業でやっていけそうな売文業者だと買っている。一筋縄ではいかない捻くれ者・…
やっぱり村上春樹より橋本治の方が好きだ。インターナショナルなコスモポリタンライターよりドメスティックエンターティナーに惹かれる。ハイブラウなインテリより世知に長けた文筆商売人を買う。ノーベル賞候補より小説現代新人賞佳作作家を選ぶ。というわ…
朝日放送テレビの看板長寿番組『探偵!ナイトスクープ』は、管理人が定期視聴する数少ないTV番組のひとつだ。その番組プロデューサー松本修さんが書いた「ディレクター心得」というメモが出てきた。古いノートの間に挟んであった。 探偵!ナイトスクープ デ…
NDU(日本ドキュメンタリストユニオン)の布川徹郎さんが遺したリアルなメモリアルをもう一枚。 (一部 誤解を招きやすく不穏当な文言もあろうが、当人の意志を尊重・最優先してそのままとする。天地無用 取扱注意でお願いする。) ドキュメンタリストの(必…
NDU(日本ドキュメンタリストユニオン)の布川徹郎さんが遺したメモがある。 1990年代一緒にTV局を攻めようとしていた頃に、貰った。以来 大事にしてきた。 後進に向けてココに書き写しておきたい。 ◎取材現場・備忘録(思いつくままに、マニアル ――― ) *予…
いまさらながら、万物流転&温故知新を思う。 振り返ればアニメも映画も昔とは全く様変わりしてしまった。管理人が仕事を始めたころは、セルアニメ時代。最大6層のセル画を動かして専用のマルチプレーンカメラでコマドリ撮影した時代だった。 それが今や、…
久しぶりにふや町映画タウンのおーもり店主さんと四方山話をした。 アニメ映画と実写映画、何がどう違うのだろうという話。 おーもり店主:アニメって一から百まで全部作り手がコントロールして作れる。観客は、その意図をどこまで正確に読み取り理解できて…
公開前から評判の高かったドキュメンタリー映画を二本見てきた。 当ブログは個々の映画を論じる映画評が主目的ではないので、題名は控える。 一本は「部落問題」もう一本は「教科書検定問題」を扱う。「面白い」映画というわけではなかったけれど、ともに「…